経団連は3月30日、資源・エネルギー対策委員会企画部会(武田孝治部会長)をオンラインで開催した。資源エネルギー庁の西田光宏長官官房戦略企画室長から、最近のエネルギー政策の検討状況について説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は次のとおり。
■ 最近のエネルギー情勢と政策
気候変動対策についての議論が世界的に一層加速している。日本は2020年に2050年カーボンニュートラル(CN)を宣言し、21年の第6次エネルギー基本計画の策定等を通じて、社会全体の脱炭素化に向けた政策を検討してきた。そうしたなか、ロシアによるウクライナ侵略が、エネルギー政策に大きな影響を与えることとなった。
日本は現在、国内で必要なエネルギーの9割を輸入に頼っている。なかでも、石炭および液化天然ガス(LNG)の約1割がロシアからのものである。仮にロシアからの供給が途絶えると、甚大な影響が及び得る。世界でエネルギー価格が高騰するなか、今後の状況によっては、わが国のエネルギー事情が一段と厳しくなる可能性もある。
こうしたもとで、わが国においてエネルギー自給率の向上は極めて重要である。エネルギー政策の基本方針、すなわちS+3E(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性)はぶれてはいけない。
国際エネルギー情勢の変化を受け、22年7月、岸田文雄内閣総理大臣が議長を務める「GX実行会議」を内閣官房に設置した。同会議では、十倉雅和経団連会長らが参加し、エネルギーの安定供給がなければ社会全体のCNを実現できないとの認識のもと、「エネルギー安定供給の再構築」と「脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革への今後10年のロードマップの策定」の二大テーマについて議論を深めた。経団連も参加する関係審議会の議論も踏まえたうえで、22年12月、「GX実現に向けた基本方針」を取りまとめた(23年2月閣議決定)。同方針に基づき、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」(GX推進法案)とともに、「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(GX脱炭素電源法案)を23年2月、閣議決定した。
■ GX脱炭素電源法案の概要と今後の対応
23年の通常国会では、GX推進法案と、重要広範議案(注)としてGX脱炭素電源法案が審議される。
GX脱炭素電源法案により、国際エネルギー市場の混乱や電力需給逼迫等に対応するため、また、グリーントランスフォーメーション(GX)に向けて脱炭素電源の利用促進を図ると同時に電気の安定供給を確保するため、制度整備を行う。
再生可能エネルギーの利用の促進に資する環境整備(系統整備のための交付金等)のため、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(FIT法)と電気事業法を改正する。安全性を大前提とした原子力発電所の活用に向けて、原子炉等規制法と電気事業法を改正する。現行制度の枠組み(運転期間40年、延長を認める期間20年)を維持する一方、裁判等の予見し難い事由による停止期間を運転期間のカウントから除外する。同時に、運転開始から30年以上経過した炉について、高経年化に伴う技術評価を10年ごとに実施し、原子力規制委員会の認可が得られた場合に限り、運転可能とすることを法定する。
今後も経済界の意見を聴きつつ、エネルギー政策の展開を進めていく。
(注)内容が重要かつ広範に及び、内閣総理大臣が本会議および付託委員会で答弁すべきとして指定される議案
【環境エネルギー本部】