5月19~21日のG7広島サミットを控え、経団連(十倉雅和会長)は4月19、20の両日、東京・大手町の経団連会館にG7各国・地域の経済界首脳らを招き、B7東京サミットを開催した。経団連から同サミットの議長を務めた十倉会長をはじめ冨田哲郎審議員会議長、11人の副会長らが、G7各国からは経済団体の幹部25人が参集した。
19日には歓迎レセプションを開催し、来賓の林芳正外務大臣、西村康稔経済産業大臣がG7での議論を紹介するとともに、各国からの参加者と懇談した。翌20日は十倉会長、岸田文雄内閣総理大臣のあいさつを皮切りに、世界経済をめぐる諸課題について討議した。また、昼食会で後藤茂之内閣府特命担当大臣(経済財政政策)があいさつを行った。さらに、B7の共同提言を取りまとめ、同日夕刻に、総理公邸で十倉会長はじめB7各経済団体代表が岸田首相に手交した。B7サミットでの議論の概要は次のとおり。
■ 十倉会長あいさつ
自由主義的な国際秩序が挑戦を受け、世界のブロック化さえ懸念されている。こうした状況のなか、基本的な価値観を共有するG7が結束を一層強固にし、世界の分断の影響を最も受けるグローバルサウス(途上国)とも連携・協力し、自由で開かれた国際秩序の維持・強化や気候変動等の地球規模課題の解決を通じて、持続可能な経済成長を実現しなければならない。
5月のG7広島サミットに向け取りまとめた共同提言で特に重要な点は、第1に、安全保障の裾野が経済活動にまで広がるなかで、「自由で公正な貿易投資のためのクラブ」を立ち上げ、自由貿易のモメンタムを維持することである。第2に、2050年カーボンニュートラルの実現には「多様な道筋」があり、例えば、火力発電への依存度が高い途上国において、アンモニアとの混焼技術を活用するなど、技術を総動員し、多くの選択肢を提供すべきことである。
われわれ経済界の総意がG7サミットの成果文書に反映され、G7が中核となり、G20、さらにグローバルサウスへと協力の輪が広がり、自由で開かれた国際秩序の再構築につながることを期待する。
■ 各セッションにおける議論
(1)持続的な経済成長の実現
コロナ禍のもとでのサプライチェーンの混乱、労働者不足等があいまってインフレ圧力が高まったなか、ロシアのウクライナ侵略によりエネルギー・食料価格が高騰し、低インフレ・低金利の時代が終わりを告げている。同時に、経済安全保障の強化やサステナビリティーの追求に対する要請が強まっている。こうした認識が示された後、G7・B7としての対応について議論が交わされた。
出席者からは、持続的な経済成長の実現に向け、リスキリングのための投資やAI等に関する共通ルール・国際標準が必要との意見が出されたほか、保護主義的な政策、政府による過剰な規制や補助金政策が取られていることに対する懸念が示され、公平な競争条件を確保することの重要性が強調された。
(2)G7としての結束の強化
自由で開かれた国際秩序が挑戦を受けているなか、G7として結束し、ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の再構築に向けて求心力を高めるべきとの声が次々と上がり、そのための法の支配の重要性が挙げられた。
また、G7として結束する分野として、サイバーセキュリティーの確保、共同研究開発、サプライチェーンの強靱化が示されたほか、貿易の武器化のような経済的威圧に対抗するうえでも結束することが重要との指摘がなされた。さらに、安全保障上の懸念国との関係を切り離すこと(デカップリング)は避け、交流を続けつつリスクを減らすこと(デリスキング)が重要との主張もあった。
(3)グローバルサウスとの協力の推進
気候変動をはじめとする地球規模課題の解決や、自由で開かれた国際秩序の再構築に向けて、グローバルサウスの理解と協力を得るための方策について議論がなされた。
グローバルサウスといっても実態は多様であることを前提としつつ、東南アジア諸国等には対等なパートナーとして接し、デジタル技術へのアクセス改善や中小零細企業の貿易を通じて、成長を実現することが重要との認識が示された。このテーマについて24年以降も継続して議論していくことで一致した。
【国際経済本部】