経団連のアメリカ委員会連携強化部会(豊川由里亜部会長)は3月23日、テッド・ヨーホー前米国連邦下院議員(共和党・フロリダ州)が米国笹川平和財団のリサーチフェローとして来日した機会をとらえ、東京・大手町の経団連会館で懇談会を開催した。米中の対立と大統領選を見据えた米議会の動静について説明を聴いた。概要は次のとおり。
ロシアによるウクライナ侵略、中国による南シナ海への進出、北朝鮮の核兵器増備などは、世界の安定を脅かすものである。
中国の今後の行動を予測するうえで、同国の長期的な目標を理解することが重要である。2017年の中国共産党第19回全国代表大会において、習近平総書記は「中国の特色ある社会主義」が新時代に入り、中国が世界の中心舞台を担うときが来たと宣言した。習氏は、漢民族は他のすべての民族より優れており、すべての人は漢民族に仕えるべき、とさえ考えている。このことから、台湾有事が勃発する可能性は高いと判断している。
先般、岸田文雄内閣総理大臣がウクライナを訪問し、同国をさらに支援する方針を示したことを高く評価する。この行動は、中国を牽制することにもつながると考えている。
北朝鮮は現在40~50発の核兵器を保有していると推定される。27年までに200発に増やすことを目標としており、インド太平洋地域に深刻な脅威が迫っている。
このような脅威に対抗するために重要なのは、強力な同盟関係である。特に日米韓の強固な同盟関係の重要性を強調したい。韓国の尹錫悦大統領も日韓関係の改善に意欲を示していることを、米国は大いに歓迎すべきだろう。また、国家安全保障にとって貿易が重要であることから、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の動向も注視したい。
24年の米国大統領選挙については、現時点ではトランプ前大統領が優勢と評価している。トランプ氏は、歴史的に高い雇用率や低い失業率など、力強い経済を実現した功績が認められている。一方で、大統領就任に際し、国家を混乱に陥れ、国を分断させた張本人との見方もある。フロリダ州のロン・デサンティス知事が他の共和党候補者として有力視されているがいまだに出馬宣言をしていない。デサンティス氏は国民からの人気が高く、大統領選への出馬を宣言すれば、トランプ氏を打ち負かす可能性が高い。現在の米国には、ビジネスマインドを持ち、大統領の役割について真剣に考え、それを実行する大統領が必要である。
自由・民主主義などの価値を共有する国同士が強固な協力関係、強力な貿易関係を結ぶことは、世界平和に貢献する。特に貿易面では、経団連のような経済団体が各国政府に対して積極的に声をあげることで、貿易政策に好影響を与えることができる。国際秩序が揺らぐなか、日本経済界が大きな役割を果たすことを期待したい。
【国際経済本部】