経団連の東亜経済人会議日本委員会(飯島彰己委員長)は3月8日、オンライン会合を開催した。日本台湾交流協会の谷崎泰明理事長から、最近の台湾情勢と日台関係について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 蔡政権下の経済政策
2016年に就任した蔡英文総統が2期の任期を満了する24年は、台湾の政治状況が大きく変化する節目となる。
蔡政権は、6大核心戦略産業計画において、従来の政策を踏襲し、デジタル関連産業の強化に加えて、主要輸出産品の多角化を目標としている。台湾の半導体生産額は世界の半分以上を占めているが、蔡氏は、半導体生産能力が台湾に集積していることにリスクはなく、今後も半導体産業振興に注力し、半導体のサプライチェーンで世界と連携していくと発言している(注)。これらの発言から、蔡氏は、半導体の生産拠点が台湾に集積していることをむしろさまざまな事態に対する抑止力と考えている可能性がある。
(注)22年、双十国慶節祝賀式典での発言
■ 台湾を取り巻く国際関係
22年10月に中国共産党第20回全国代表大会が終了し、習近平政権の基盤が強化された。台湾における11月の統一地方選挙において、国民党が圧勝したことから、中国は台湾に対して懐柔的な姿勢を示す一方、台湾への武力行使を排除しないとしている。また、台湾の国際社会における存在感を弱めるため、介入を継続する基本姿勢や戦略は変わっていない。このため、蔡政権下で台湾と断交した国はすでに8カ国(3月8日時点)を数える。
そうした動きのなかで、最大の問題は、世界保健機関(WHO)総会への台湾のオブザーバー参加が否決されたことである。新型コロナウイルス感染症は、世界各国地域が国境を越えて議論すべき課題であるにもかかわらず、台湾は、議論の場に参加できていない。日本は欧米諸国と共に台湾のWHOへのオブザーバー参加を働きかけているが、いまだに認められていない。
■ 今後の日台交流の活発化と関係発展への期待
日台関係は、11年の東日本大震災以降、緊密化している。特に、安倍晋三元内閣総理大臣の「台湾有事は日本有事」という発言が大きく報道され、台湾の人々の心のなかに浸透していることも影響している。現在、新型コロナの水際対策が緩和され、日台双方で活発な人的往来・交流が回復しつつあり、今後、日台関係の一層の拡大が期待される。
【国際協力本部】