経団連の通商政策委員会企画部会(神戸司郎部会長)は2月27日、エリック・ウッドハウス米国務副次官補の来日の機会をとらえ、東京・大手町の経団連会館で懇談会を開催した。米国の対外制裁の現状ならびに制裁が経団連会員企業のビジネスに与える影響と展望について説明を聴いた。
ウッドハウス氏は、国務省の脅威金融対策・制裁課が同省の地域局ならびに制裁調整官室、さらには財務省やその他利害関係者と連携して制裁を発動していることを紹介。あわせて、対ロシア、北朝鮮、ミャンマーならびにイランを含む国別の制裁について、その概要、実施方針、2022年に実施した措置を説明した。
制裁の一方で、米国が食料生産と輸出を支援するための政策を推進していることにも言及。具体的には、黒海穀物イニシアティブ(注)に対する米国の強力な支援によって、何百万トン規模の食料の越境移動が可能となり、その結果、価格引き下げを通じて、低中所得国の食料安全保障に貢献していると指摘した。また、ロシア産原油の上限価格設定が、世界のエネルギー市場の安定を確保しつつ、プーチン大統領によるウクライナ侵略の資金源を断ち切る大きな一歩であると述べた。
講演後の質疑応答において、ウッドハウス氏は、日本企業による国際的な制裁を順守するための取り組みや、米政府と民間との効果的な情報共有のあり方等について、経団連側の意見を聴取した。
(注)ロシア軍による黒海封鎖を解除し、ウクライナ産の穀物、肥料、食料の輸出を可能とすべく、航路の安全を確保するための措置。22年7月22日、国連とトルコの仲介のもと、ウクライナ、ロシア間で締結
【国際経済本部】