経団連は2月6日、労働法規委員会労働安全衛生部会ワーキング・グループをオンラインで開催した。厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課の中村宇一産業保健支援室長から、産業保健のあり方をめぐる検討状況について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 産業保健の現状と課題
高年齢労働者の安全衛生対策や治療と仕事の両立支援、労働者のメンタルヘルス対策、女性の健康課題への対応、化学物質規制の仕組みの見直しなど、産業保健にかかわる課題は多様化している。
社会の変化に対応するため、労働安全衛生法は累次にわたり改正され、関連するさまざまな指針も策定されてきた。しかしながら、小規模事業場を中心に、産業医や衛生管理者等の選任状況が低調なだけでなく、十分な活動が必ずしも行われていない実態もみられる。定期健康診断における有所見者の割合は、事業場の規模が小さくなるほど高いなど、小規模事業場では労働者の健康状態も悪い状況がみられる。事業場の規模によらず、すべての労働者が健康で安全に働ける環境整備が喫緊の課題となっている。
■ 検討会の設置と主な検討課題
厚労省は、2022年10月に、労使団体や学識経験者、関係者で構成する「産業保健のあり方に関する検討会」を設置した。
主な検討課題は、(1)産業医の選任義務がない労働者数50人未満の小規模事業場に必要な産業保健サービスを届ける仕組み(2)産業医や衛生管理者、保健師等への教育研修といった、産業保健スタッフの資質向上と産業保健サービスの質の確保(3)小規模事業場で取り組みが遅れているメンタルヘルス対策や健康診断実施後の有所見者への対応の推進(4)小規模事業場に対する支援(地域産業保健センターによる支援、地域の経済団体や同業者組合等と連携した集団的な産業保健体制等)(5)地域医療・保健との連携(6)産業保健活動に消極的な中小企業の経営者の意識改革――などである。
検討会はこれまでに3回、構成員や有識者からヒアリングを行っている。今後は、各論点に関する議論をさらに深め、長年の課題でもある、小規模事業場で働く労働者の健康確保のための産業保健活動の充実に向けて、実効性のある仕組みをつくっていきたい。
【労働法制本部】