経団連は2月2日、行政改革推進委員会(筒井義信委員長、時田隆仁委員長)をオンラインで開催した。大槻奈那規制改革推進会議議長(名古屋商科大学ビジネススクール教授、ピクテ・ジャパンシニア・フェロー)から、政府の規制改革の取り組みと課題について聴くとともに懇談した。規制改革推進会議は、2022年12月に「規制改革推進に関する中間答申」(「中間答申」)を公表している。同中間答申には経団連の「2022年度規制改革要望」の一部が盛り込まれた。説明の概要は次のとおり。
日本の経済成長率は、少子高齢化による労働投入量の減少を背景に低下しており、政府の経済政策はなかなか効果を発揮していない。こうした現状を踏まえ、今後の日本の経済成長に向けて規制改革推進会議がすべきことは、労働投入量を急激に増やすことは難しいなかでも、生産性向上や資本・労働力の増加を図ることである。経済成長を支えるイノベーションについては、日本はベンチャー企業ではなく大手企業が牽引してきた。規制改革を通じて、ベンチャー企業をGAFAM(米国主要IT企業5社)の黎明期のような状態まで成長させ、大手企業がそれを支えやすい社会をつくることも重要である。
こうした考えのもと、規制改革推進会議は、技術革新や設備投資・資金調達、働き方改革・円滑な労働移動を促進するための規制改革に取り組んでいる。例えば、「中間答申」では、他国に比べて実装が遅れていたプログラム医療機器(SaMD=Software as a Medical Device)(注)の開発・市場投入の促進に向けて、薬事承認の迅速化等を進めた。また、日本における外国人起業家の起業促進に向けて、国家戦略特区で認められた特例を全国展開し、在留資格取得要件の緩和にも取り組んだ。さらに、就労証明書について、全国の様式を統一するとともに、雇用主が直接地方公共団体にオンラインで提出できるようにした。23年夏の答申取りまとめに向けて、契約書の自動レビューサービスの利活用促進や、医療分野における人手不足解消に資するタスクシェア、タスクシフトの推進などに取り組んでいきたい。特に、労働・教育分野の改革が、経済成長に必要な労働投入量や労働生産性の向上に、直接的にも間接的にもかかわることから重要であると考える。
技術革新、人手不足等を背景として、岩盤規制を含め多くの規制改革が進んではいる。しかし、こうした社会の変化を待っていては、規制改革が社会の動きに追い付かないという危機感がある。規制改革推進会議では、規制改革を強く後押しするため、(1)社会への影響度が大きい規制の見直しを早急に進める(2)関連する規制を横串で見直す――などの取り組みを進めていく。
(注)医療機器プログラムまたはこれを記録した記録媒体たる医療機器(中間答申より)
【産業政策本部】