経団連は1月12日、東京・大手町の経団連会館で危機管理・社会基盤強化委員会(永野毅委員長、相川善郎委員長、安川健司委員長、渡邉健二委員長)を開催した。村山一弥内閣官房国土強靱化推進室次長から、国土強靱化の推進にあたり、これまでの成果を踏まえた新たな基本計画の作成について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ 国土強靱化基本計画の概要
東日本大震災を契機として、2013年に「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」が制定され、その翌14年に「国土強靱化基本計画」(基本計画)が閣議決定された。基本計画は、国土・経済社会システムの脆弱性の総合的な分析・評価を踏まえ、分野ごとに基本的な指針を定め、国土強靱化にかかる国の他の計画等の指針となるもので、23年、改定する予定である。
■ 切迫する大規模地震発生
発生した際に最も被害が大きいであろうといわれている自然災害が大規模震災である。マグニチュード7.5以下の首都直下型地震は明日発生しても不思議ではない。
■ 事前防災対策の重要性
災害が発生すると、廃棄物の処理を含め復旧に莫大な費用がかかる。しかし、事前に十分な防災対策を講ずると、結果として少ない投資で大きな効果をもたらすこととなる。国民の生命や財産を守るためには事前の防災対策を加速する必要がある。
■ 強靱な社会の形成
災害が起きても迅速に回復する国土や経済社会システムを構築する必要がある。加えて、復興段階において、より強靱な地域づくりを行う「ビルドバックベター」という考え方がある。実際、熊本地震の復興では1兆円規模の資金を投入し、次の災害に備えた地域づくりをしたところ、今では多くの工場が進出するようになっている。
国土強靱化を進めるためには、国土政策と産業政策を連携させるとともに、官民の連携も重要である。そのための補助金や税制による支援も、各種用意している。
■ 国土強靱化の取り組みの効果の発現
「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」や「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」等の取り組みを進めてきた結果、着実に効果が表れ始めている。22年の台風14号は、過去最強クラスの勢力とも報じられていたが、河川の河道掘削やダムの事前放流といった事前の備えをしっかりと行っていたことで、大規模な浸水被害の発生を防止することができた。被災した地域もあったが、それは対策が実施されていなかったところであり、全国各地から、国土強靱化の効果が発現していると聴いている。
■ 23年の改定に向けて
引き続き、国土強靱化の取り組みを着実に進めることが重要である。今回の改定において、基本計画の枠組みを大きく変更することは想定していない。政府の有識者懇談会での意見を踏まえて改定案を作成し、関係団体等への意見照会やパブリック・コメントを経て、23年夏を目途に閣議決定される予定である。
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講演後、BCP(事業継続計画)や複合災害リスク、防災集団移転などについて意見交換した。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】