経団連は12月20日、東京・大手町の経団連会館で消費者政策委員会企画部会(楯美和子部会長)を開催した。東京都立大学経済経営学部の水越康介教授から、「応援消費」の広まりと企業のマーケティングについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 応援消費の広まり
近年、消費行動を通じて、生産者や企業を応援する「応援消費」が広がっている。国や自治体が、被災地支援や地方創生等を目的として行うキャンペーンにおいても、「買って応援しよう」という言葉がよく使われるようになった。
応援消費が広がっている背景として、主に次の四つの要因が考えられる。
(1)環境や社会、倫理の問題に対する人々の意識が高まっている。
(2)応援消費は、自分が欲しいものを買うことで、相手も自分も得をする「一石二鳥」の良さがある。寄付やボランティア活動と比較して実践しやすい。
(3)デジタル技術やソーシャルメディアが発達し、人々の「距離」が近くなって、応援したくなるような親しみを感じやすくなっている。また、人々が投稿する「口コミ」や発信等によって、応援の呼びかけなどの情報が一挙に広がる可能性がある。
(4)環境や社会、倫理の問題を「市場を通じて解決する」という考え方が広がっている。
■ コーズリレーティッド・マーケティング
従来、社会的に大義のある行動「コーズ」と企業の販売活動等を結び付ける「コーズリレーティッド・マーケティング」が行われてきた。
コーズリレーティッド・マーケティングにおいて、消費者の支持を得るためには、なぜ企業が特定の社会課題を解決するのか、コーズと商品等のフィット感が重要になる。また、商品等の特性や消費者の心理的な属性によって、マーケティングの成果が変わってくる。例えば、菓子やスポーツなど、「おいしい」「楽しい」といった感覚を伴うものと、日用品等の機能や価値がはっきりとしているものでは、寄付付き商品等との相性や効果が異なってくる。また、「純粋な寄付よりも消費行動を伴うほうが実践・継続しやすい」という消費者もいれば、逆に、「純粋に寄付をしたい」「経済活動を伴いたくない」という消費者も少数ながら存在する。
■ 新しい段階の消費社会
応援消費や社会課題の解決の主義主張を前面に掲げた消費行動は、日本では必ずしも一般に普及していない。だからこそ、企業においては、先行者利益を獲得するチャンスととらえ、社会課題の解決が重要であることを人々に提示してニーズをつくり出していく「創造的適応」を実現してはどうか。社会課題の解決に対し、ビジネスや市場が果たすべき役割が大きくなっている。
◇◇◇
意見交換では、応援消費や社会課題の解決に向けた消費を拡大するためのポイントや留意点について出席者から質問があった。これに対し水越氏は、コーズと事業のフィット感や、応援対象との「距離」の近さ、継続性の観点から、行動の結果を消費者に知らせることが重要と応えた。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】