日米経済関係の重要性が一層高まるなか、経団連とブランズウィック・グループは11月21日、「日米グローバル企業の経営トップに対する意識調査」を公表した。同調査は、M&Aと社会課題対応を切り口として、日米トップ企業約20社の経営層に個別インタビューを行い、米国の経営環境に対する日米の経営層の認識の共通点・相違点を分析したもの。
調査の結果、日米双方の経営者が共通で挙げたキーワードのうち、(1)文化(2)信頼(3)ダイバーシティ(4)ステークホルダー・エンゲージメント(5)社会課題へ取り組む理由――の認識にギャップがあることがわかった。
(1)文化
多くの日本企業は、M&Aにおいてカルチャーフィットを最優先の課題に挙げた。買収先の検討に際しては、ミッションやビジョンだけでなく、自社と類似した社風を持つことを重視していた。
米国企業は、文化をより流動的なものととらえていた。それぞれの違いを理解し合い、時流も踏まえたより良い文化を柔軟に生み出すべきと考えていた。
(2)信頼
日米の経営者ともに、被買収企業の経営者を信頼することが非常に重要であるとした。
そのうえで、日本の経営者は、彼らの能力に加えて、自社への理解度により焦点を当てていた。
米国の経営者は、専門性や豊富な経験をより重視していた。
(3)ダイバーシティ
多くの日本の経営者は、ダイバーシティを重要な社会課題として挙げつつ、人事部が主導するジェンダーに関する取り組みに言及した。
米国の経営者は、人種、宗教、身体的・精神的障がい等、多様性を広義にとらえていた。また、多様な視点を取り込むことは経営上も有益と考え、トップ主導で取り組むべき課題と認識していた。
(4)ステークホルダー・エンゲージメント
日本企業は、顧客やサプライヤーといった事業に直接関係するステークホルダーとの対話を重視していた。その他のステークホルダーに対しては、業界団体を通じた発信を主軸に据える姿勢がみられた。
米国企業は、従業員やNGOを含む幅広いステークホルダーに対して、より能動的に対話を試みる傾向があった。
(5)社会課題へ取り組む理由
日本の経営者は、企業が社会課題解決に貢献することは企業理念に包含されており当然ととらえていた。その前提のもと、実直なコンプライアンスの確保に焦点を当てていた。
米国の多くの経営者は、社会的意義に加え、従業員エンゲージメント向上の観点からも、社会課題解決に取り組み、それを発信することが重要と指摘した。
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こうした認識のギャップを埋めることが、米国市場における日本企業のさらなる飛躍につながると考えられる。インタビュー結果を踏まえた分析は、多様な経験や視点を経営判断に取り込む体制の構築によって、ギャップの発生を防げることを示唆している。
報告書の公表にあわせ、経団連、ブランズウィック・グループ、米ジャパン・ソサエティーは、ニューヨークでセミナーを共同開催し、在米日本企業の経営幹部や専門家によるパネルディスカッションを行った。同セミナーには、在ニューヨークの日本企業関係者を中心に約50人が参加した。
報告書の全文は米国事務所ウェブサイトを参照。
Survey on Attitudes Toward the Top Management of Global U.S. and Japan Companies
(日米グローバル企業の経営トップに対する意識調査)
https://keidanren.us/publication/survey-on-attitudes-toward-the-top-management-of-global-u-s-and-japan-companies/
【米国事務所】