経団連(十倉雅和会長)は12月13日、「企業行動憲章 実行の手引き」(「実行の手引き」)を5年ぶりに全面改訂し、公表した。
■ 「実行の手引き」の位置付け
民主導による豊かで活力ある社会を実現するためには、企業が高い倫理観と責任感を持って行動することが必要との観点から、経団連では、「企業行動憲章」を制定し、会員企業に、その精神の尊重ならびに実践を呼びかけている。「実行の手引き」は、会員企業が自社の業種・業態、事業の特徴、経営理念等を踏まえて、企業行動憲章の精神を自主的に実践するための参考資料である。
■ 改訂の背景
2017年の企業行動憲章改定では、「持続可能な社会の実現を牽引する企業の役割」として、Society 5.0の実現を通じたSDGsの達成、すなわち「Society 5.0 for SDGs」を明確化した。
その結果、前回の改定以降、SDGsの経営への統合は、金融資本市場における意識の高まりと相まって、着実に進展している。
一方、気候変動や生態系崩壊の危機など地球環境問題の深刻化や、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済・社会への構造的影響、行き過ぎた株主資本主義のもとで進行していた格差の拡大、ロシアのウクライナ侵略による世界平和と安全保障への脅威など、世界は、複合的な危機に直面している。
このような環境変化のなかで、複合的な危機を克服して持続的に発展していくには、企業行動のバージョンアップとその加速が必要となる。そこで、憲章改定後の国内外の動きや、それに伴う経団連の政策と活動、企業の実践を踏まえ、企業行動憲章の「序文」ならびに「実行の手引き」を改訂することとした。
■ 改訂のポイント
企業行動憲章が求める企業行動の今日的な意義を示す「序文」では、今回、副題を「サステイナブルな資本主義の確立を目指して」とし、社会性の視座に立脚した企業行動の実践について記述している(各章における改訂のポイントは図表参照)。具体的には、次の3点の行動を求めている。
(1)人権を尊重し、働き方の変革と人への投資を行いつつ、グリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて社会的課題の解決を目指し、社会や個人のウェルビーイングの向上に貢献すること。
(2)多様なステークホルダーとの新たな価値の協創によって、持続的な成長を実現すること。
(3)自社のみならず、グループ企業、サプライチェーンにも行動変革を促すことで、持続可能性と強靱性を確保し、世界で起きているさまざまな危機に対応すること。
改訂の背景/章 | 改訂ポイント |
---|---|
改訂の背景 |
|
第1章 持続可能な経済成長と 社会的課題の解決 |
|
第2章 公正な事業慣行 |
|
第3章 公正な情報開示、 ステークホルダーとの 建設的対話 |
|
第4章 人権の尊重 (2021年12月改訂、今回、 その後の動きを踏まえ さらに改訂) |
|
第5章 消費者・顧客との 信頼関係 |
|
第6章 働き方の改革、 職場環境の充実 |
|
第7章 環境問題への取り組み |
|
第8章 社会参画と発展への 貢献 |
|
第9章 危機管理の徹底 |
|
第10章 経営トップの役割と 本憲章の徹底 |
|
会員各位におかれては、改訂された「実行の手引き」を参考に、企業行動憲章の趣旨に則った企業行動をお願いしたい。
【SDGs本部】