経団連の雇用政策委員会人事・労務部会(直木敬陽部会長)は11月11日、オンラインで会合を開催した。労働政策研究・研修機構(JILPT)の藤本真主任研究員から「70歳就業時代における高齢者雇用~企業の雇用体制・あり方と高齢者の就業に関する分析」について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 65歳以降の雇用に関する現状分析
2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法で、事業主に対して、70歳までの就業確保措置が努力義務として規定された。厚生労働省の調査によると、70歳までの就業確保措置を講じている企業は25.6%であり、そのうちの約8割が「継続雇用制度の導入」で対応している。
また、JILPTが実施した企業向けの調査によると、「65歳以降も希望者全員が働くことができる」企業が21.8%であるのに対して、「65歳以降は希望したら基準該当者は働くことができる」企業は、その倍以上の58.0%であった。65歳以降では、高年齢者を選抜して継続雇用する傾向がうかがえる。加えて、同調査では、65歳以上の労働者を雇用するか否かの方針は65歳までの雇用継続体制に左右されることも明らかになった。具体的には、60歳定年後の仕事や役割の範囲が限られている企業では、65歳以降の雇用・就業継続が進展しにくい傾向が確認された。
■ 65歳までの雇用継続体制と雇用者の評価
企業が実施している65歳までの雇用継続体制は、(1)60歳定年制+変化タイプ(2)60歳定年制+無変化タイプ(3)65歳定年制タイプ――の三つに大別できる。(1)は、60歳定年後に責任の軽減や業務内容を変更するものであり、約4割の企業が該当する。(2)は、60歳定年後に業務内容を変化させない体制を指し、約4分の1の企業が該当する。(3)の65歳を定年としている企業は、約1割である。
前述のJILPTの調査によると、(2)や(3)を実施している企業は、(1)の企業と比べ、60歳以上の者の労働意欲や若・壮年層のモラールの低下が発生しにくいとされる。したがって、従業員のやりがいを高める観点からは、責任や業務内容の変化を伴わない体制が有効といえる。
他方、JILPTが実施した高年齢者個人向けの調査によると、「従業員の体力等に関する会社側の配慮」を積極的に進めている企業で働く高年齢者は、仕事に対する満足度が高い。個々の高齢者のニーズに即した雇用管理の重要性が示唆されているといえる。ただし、このような配慮が高齢者自身の潮時(引退時期)を意識させることとなり、就業継続の上限年齢を自ら設定する傾向がより強く表れることに留意する必要がある。
これらの結果をバランスよく考慮し、高年齢者雇用制度や取り組みの検討に反映する観点が重要といえる。
【労働政策本部】