経団連は11月1日、東京・大手町の経団連会館でデジタルエコノミー推進委員会(篠原弘道委員長、東原敏昭委員長、井阪隆一委員長)を開催した。平将明衆議院議員・自由民主党デジタル社会推進本部web3プロジェクトチーム座長から、web3(注1)の可能性と政策課題について聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ web3の可能性
成長戦略の柱であるスタートアップ政策のなかで、最も重要なのがweb3に関する政策である。価値の収益化という点で、web3はWeb2.0(注2)に比してコンテンツの占める比重が大きい。このため、ゲームやアニメ、ポップカルチャー、地方の伝統文化等、豊富なコンテンツを有するわが国にとって、これらの価値を最大化する大きなチャンスであるといえる。
また、新潟県の旧山古志村(長岡市山古志)では名産の錦鯉にちなんだNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)(注3)を発行し、実際の人口よりも多い「デジタル村民」を世界中から集めるとともに、この村民らによって、地方創生に向けた意思決定を行っている。今後、こうした事例にとどまらず、働き方改革や気候変動対策など、さまざまな分野において活用事例が生まれるだろう。
■ 早急な対応が求められる政策課題
わが国がweb3を推進していくうえで、早急に対応すべき政策課題として、4点挙げたい。
第1に、自社で発行、保有する暗号資産に対する期末時価評価課税の負担が重く、企業の海外流出の要因となっている。継続保有する場合、実現利益がなくとも暗号資産に課税されるため、ブロックチェーン技術を活用した起業や事業開発を阻害している。こうした現状を改善すべく、発行した法人が継続して保有する暗号資産については、期末時価評価課税の対象外とすべきである。
第2に、暗号資産を発行あるいは保有する企業において、監査法人の会計監査を受けられない事例が散見され、大企業のweb3事業への参入を困難なものとしている。
第3に、暗号資産を新たに取り扱う際の事前審査が長期にわたるため、海外と比べて迅速な取り扱いを開始できない。実際、海外で流通しているメジャーな暗号資産が、わが国では取引されていないケースもみられる。
第4に、DAO(Decentralized Autonomous Organization、分散型自律組織)(注4)の法人格が不明瞭なため、DAOを事業化したり、規模を拡大したりする際、ハードルとなっている。
これらの諸課題に対しては、議員立法やガイドライン等によって、柔軟かつ迅速に対応していきたい。
(注1)ブロックチェーン技術により、特定の仲介者を介さずにデータをやりとりできるインターネットのあり方
(注2)普及初期のインターネットにはなかった技術や仕組みに基づき、情報の受け手と送り手が流動化したインターネットのあり方
(注3)偽造不可の鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ
(注4)ブロックチェーン技術を用いて、意思決定の承認等を自動化した組織。ガバナンストークン等の活用により中央管理者を不在とし、組織の運営コストを大幅に低減できること等が特長
【産業技術本部】