経団連の税制委員会(宮永俊一委員長、柿木厚司委員長)と21世紀政策研究所(十倉雅和会長)は10月20日、OECDおよびOECDに対する民間経済界の諮問機関であるBusiness at OECD(BIAC)と国際課税に関する会議を対面とオンラインのハイブリッド形式で開催した。同会議は、OECD・G20によるBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを契機として2015年に開始してから毎年開催しており、今回で第8回となる。なお、第1回から同会合に参加していたパスカル・サンタマンOECD租税政策・税務行政センター(CTPA)局長は10月末でOECDを退職し、今回が局長として最後の参加となった。
サンタマンOECD・CTPA局長、グレース・ペレス=ナバロ同次長(11月から同局長)、青山慶二21世紀政策研究所研究主幹、小宮敦史財務省主税局国際租税総括官をはじめ、内外の多国籍企業関係者や海外の税務当局関係者を登壇者に迎え、デジタル経済や環境等の諸課題について、プレゼンテーション、パネルディスカッションを行った。会員企業から200人余りが参加した。
OECD・G20はこれまで、経済のデジタル化に対応した新たな国際課税ルールづくりを進めてきた。当該ルールは、市場国への新たな課税権の配分等を扱う第1の柱と、国際的に統一の最低税率(15%)を設定する第2の柱から構成される。現在、21年10月の政治的な合意を踏まえ、制度の詳細設計等が検討されるなか、わが国企業・経済界のスタンスを発信した。
第1の柱に関するセッションでは、OECDが、利益Aが適用される範囲や収入源泉地の特定のルール、二重課税の排除の方法などの検討状況のほか、申告・納税の実務に関する執行上の課題、税務紛争の予防・解決に関わる税の安定性など、22年に検討が進展した事項について説明した。これに対して、日本企業からは、制度の適用対象となるかどうかの判定の簡素化、利益の配分地を定める収入源泉ルールの簡素化や、二重課税の適時・適切な排除、紛争の防止・解決に資する税の安定性の確保、申告実務の簡素化等について意見が出された。
第2の柱に関するセッションでは、OECDが、15%の最低税率課税の各国における23年の導入を支援すべく、22年末にも公表予定の実施ガイダンスを策定中であるほか、実務の簡素化に資するセーフハーバーの設定、標準化された情報申告の仕組み等についての検討を進めている旨、説明した。これに対して、日本企業からは、国別報告書(CbCR)を用いた方策やGloBE(グローバル・ミニマム課税)所得計算における調整項目の抑制など、各種の簡素化措置への期待や実務における申告に関する情報収集上の課題の指摘とともに、国内における最低税率課税制度(QDMTT)の設計・実務の簡素化等を求める意見があった。
税と環境のセッションでは、OECDから、税と環境の多国間の枠組みである包摂的フォーラムにおける検討等について説明があった。これを受けて、日本企業からは、カーボンニュートラルの実現に向け、技術開発や設備投資の原資を確保し、イノベーションを促進する制度とするとともに、国際的に公平な競争条件を確保することが重要であるという意見等が出された。
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経団連は、今後の第1、第2の柱の制度化や税と環境の議論に際し、日本企業の問題意識や要望が十分に反映されるよう、引き続きBIACとの連携も図りつつ、OECDおよびわが国の財務省などとの対話を継続・強化していく。
【経済基盤本部】