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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年11月10日 No.3566 オコンジョ=イウェアラWTO事務局長と懇談

オコンジョ=イウェアラ氏

経団連の通商政策委員会(中村邦晴委員長、早川茂委員長)は10月19日、世界貿易機関(WTO)のンゴジ・オコンジョ=イウェアラ事務局長の来日の機会をとらえ、東京・大手町の経団連会館で懇談会を開催した。オコンジョ=イウェアラ事務局長の発言概要は次のとおり。

6月に開催された第12回WTO閣僚会議(MC12)では、自由な貿易投資の実現に向けて前向きな議論が行われ、漁業補助金、食料安全保障、パンデミックへの対応等について合意した。多くの国・地域が参加するなか、満場一致の合意が形成し得る国際機関は、今やWTOが唯一であるといってよい。

WTOの紛争解決機能については、現在、二審にあたる上級委員会が停止している。紛争解決機能は、予測可能性を担保するためにも重要であり、2024年までの機能回復を目標としている。経団連には、米国産業界と対話を重ね、解決に向け支援してほしい。

デジタル化への対応も必須である。MC12では、電子的な送信への関税不賦課にかかるモラトリアムの延長に合意した。モラトリアムは恒久化することが望ましいが、電子的送信への関税による収入が失われる懸念等から、一部の途上国には反対の声も聞かれる。WTOとしては、モラトリアムの終了が、本当に途上国の歳入増や雇用創出につながるのか、タスクフォースを立ち上げ、客観的かつ独立した立場から検証したい。また、WTO電子商取引の交渉には、現在、87の加盟国・地域が参加している。これは、複数国による取り組みを起点にできる限り多くの国の合意を目指す「プルリラテラル・アプローチ」の一例であり、日本がこの交渉においてリーダーシップを発揮していることを歓迎する。交渉の妥結には、キャパシティー・ビルディングを通じて、途上国から、自由な越境データ流通に関する深い理解を得ることが必要である。加えて、情報技術協定(ITA)は、経済界も重視していることを認識しており、参加国・対象物品の拡大に前向きに取り組みたい。

グローバルな課題の解決も重要である。貿易は、気候変動問題などに対して解決策を提示する必要があり、例えば、環境物品の貿易を促進することは有効である。欧州で導入予定の炭素国境調整措置(CBAM)の運用にあたっては、WTO整合性を担保することが必要であり、今後、運用状況を注視する。現在、世界には、異なるカーボンプライシングの制度が乱立している。細分化された制度は、企業、特に途上国の企業に混乱を来し得るため、WTOとして、カーボンプライシングに関するグローバルなアプローチの可能性に関心を寄せている。

日本の経済界は、多角的な貿易体制をより強靱でサステイナブルなものにすることができる。現在、アジア内の貿易の約60%を中間財が占めており、これが地域のサプライチェーンを支えている。将来の課題は、グローバル・エコノミーの周辺の人々の主流化である。つまり、アフリカやラテンアメリカ等にまで国際分業を進めることで、現在では原材料のみ提供する国々を、サプライチェーンにさらに関与させることが必要である。私はこれをRe-Globalizationと呼んでいる。サプライチェーンの脆弱性に対処するためにも、日本企業には、これまで以上に、あらゆる地域への投資をお願いしたい。

【国際経済本部】

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