経団連(十倉雅和会長)は、2015年以来、ワシントンDCのほか、各州にミッションを派遣し、米国の経済社会の発展に日本企業が大きく貢献していることを訴えるとともに、連邦・州の行政府や議会、経済界などとの重層的な関係の構築に努めてきた。新型コロナウイルスの影響で、20年2月を最後にミッションの派遣を中断していたが、国際的な人の往来も徐々に正常に戻りつつあることから、アメリカ委員会(早川茂委員長、植木義晴委員長)は、10月13日、植木委員長を団長とする計13人のミッションをニュージャージー州に派遣した。同州は、22年度の全米知事会(NGA)の議長を務める。
ニュージャージー州では、同州への投資の呼び込みと経済開発を目的とする経済開発組織「Choose New Jersey」を訪問し、ウェスリー・マシューズCEOや同州の政府幹部と懇談した。概要は次のとおり。
ニュージャージー州への投資は、「Good value for money」と評価できる。ビジネスのコストが著しく低いわけではないが、多くの企業が同州への投資に価値を見いだしており、実際、約50の日本企業が長年にわたってビジネスを行っている。投資先としての魅力の第一は、優秀な人材の豊富さである。住民の教育水準が高く、世界的にレベルの高い大学が数多く立地しているため、研究開発も盛んである。また、人種も多様であり日系人も多い。第二に、地理的な利点が挙げられる。米国の心臓部に位置し、ニューヨーク、フィラデルフィア、ボストン等、米国内のハブとなる都市への接続が良く、アクセスのためのインフラも充実している。ニュージャージー州は、こうした優秀な人材と立地に支えられ、イノベーションが生まれる素地が整っている。
Choose New Jerseyは、同州に進出した企業に対し、多様なサービスを無料で提供する非営利の法人である。例えば、市場調査等を代行し、進出企業に対して情報を提供するほか、拠点の設立を支援する。また、州内のビジネスパートナーの紹介も可能である。10年の発足以降、360以上の企業の同州への進出を支援し、計4万人もの雇用の創出に寄与してきた。日本については、最重要市場であるカテゴリー1に分類して、投資誘致に向けた取り組みを強化している。同カテゴリーに位置付けられるのは、西欧諸国が中心であり、東アジアでは日本のほか、韓国と台湾のみである。
日米は、共通の価値観という揺るぎない基礎に支えられており、貿易や投資といった経済的な結び付きが、二国間関係をさらに深化させている。フィル・マーフィー州知事は、かつてビジネスパーソンとして活躍していたころ、アジアに駐在し、何度も日本を訪問するなど、日本との縁も深い。日本および経団連とのさらなる関係強化に期待する。
【国際経済本部】