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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年10月20日 No.3563 濱野特許庁長官と意見交換 -知的財産委員会

左から津賀委員長、濱野長官、遠藤委員長、時田委員長

経団連は10月3日、東京・大手町の経団連会館で知的財産委員会(津賀一宏委員長、遠藤信博委員長、時田隆仁委員長)を開催した。特許庁の濱野幸一長官(2022年7月就任)から、知的財産の活用促進に向けた特許庁の取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 経営戦略とオープン・クローズ戦略の強化に向けて

わが国の企業価値の持続的成長という観点から、無形資産(注1)への投資は不可欠である。21年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードに、知的財産への投資の情報開示等の規程が明記されたことを踏まえ、特許庁では22年5月、経営における知財・無形資産の位置付けを可視化すべく、「IPランドスケープ」(注2)を普及・定着させるための事例集を公表した。

知財の活用や技術の標準化等を組み合わせた「オープン・クローズ戦略」が、企業の事業展開上のカギを握る。特許により技術を独占することで自社の優位性を確保する(=クローズ戦略)一方、技術の標準化等により市場を拡大する(=オープン戦略)ことによって、企業の競争力強化や収益力の向上につながることが期待される。

■ 知的財産制度における新たな検討課題~メタバース、共有特許

22年6月に「特許庁政策推進懇談会」が取りまとめた報告書で示された論点の一つが、メタバース空間における知的財産権の保護である。同報告書を受け、特許庁では「仮想空間に関する知的財産の保護の状況に関する調査研究」を実施中である。具体的には、意匠法や商標法ほか、現行の知的財産権各法の法域で保護される対象を整理しつつ、諸外国の法制や議論の状況等を調査している。

大学と企業の共同研究成果は両者の共有特許とされることが多いが、特許法のもと、第三者にライセンス(実施の許可)するには、他の共有者の同意が必要とされている。仮にライセンスの際に他の共有者の同意を不要とするよう特許法を改正した場合、企業間あるいは産学の連携を阻害しかねない。一方、契約によって、他の共有者の同意を不要とすることも可能ではあるが、特許庁では、大学とスタートアップ等との連携を促進するため、想定されるケースに即したモデル契約書の普及に努めている。

■ 経済安全保障推進法を踏まえた今後の対応

22年5月に成立した経済安全保障推進法における「特許出願の非公開に関する制度」は、公開されると安全保障上の問題がある発明の特許出願について、特許庁が第一次審査(技術分野等によるスクリーニング)で絞り込みを行ったうえで、内閣府が第二次審査(保全審査)を実施し、必要に応じてその公開を留保する仕組みである。今後、24年春の施行に向けて、審査を行うシステムを開発していく。経済活動やイノベーションと安全保障の両立という観点に留意しつつ、内閣府や内閣官房等と連携しながら準備を進めていきたい。

(注1)特許権や著作権等の知的財産権から、技術やデータ、顧客ネットワークなど物理的形状を持たない企業の基盤的資産まで幅広く包含

(注2)経営戦略または事業戦略の立案に際し、(1)経営・事業情報に知財情報を取り込んだ分析を実施し、(2)その結果(現状の俯瞰・将来展望等)を経営者・事業責任者と共有すること。その結果に基づいて、意思決定が行われる

【産業技術本部】

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