経団連は8月26日、東京・大手町の経団連会館でバイオエコノミー委員会(小坂達朗委員長)の初回会合を対面とオンラインのハイブリッド形式により開催した。内閣府科学技術・イノベーション推進事務局の宇井伸一企画官から、わが国のバイオ戦略について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 科学技術・イノベーション政策
岸田内閣は、新しい資本主義実現に向けた成長戦略の第1の柱として科学技術立国の実現を掲げている。科学技術・イノベーションによる「成長」と「分配」の好循環の確立に向けて、(1)知の基盤強化と人材育成強化により科学技術・イノベーションの源泉を創出する(2)イノベーション力の強化を通じてその恩恵を国民や地域に届ける(3)戦略的な研究開発の推進によって勝ち筋となる技術を育てる――ことを戦略の柱に据え、社会実装に軸足を置いている。また、量子技術やAIと並びバイオを重要分野として位置付けている。加えて、世界に伍するスタートアップ・エコシステムの形成についても総合科学技術・イノベーション推進会議で議論している。スタートアップ・エコシステムの形成支援はバイオコミュニティの形成と親和性があるため、連携しながら施策を進めていきたい。
■ わが国のバイオ戦略
感染症ならびに気候変動への対策といった社会課題を解決し、経済成長を図るうえで不可欠なことから、各国はバイオエコノミーを重要視しており、戦略的な取り組みを展開・加速している。このような状況のなか、わが国は2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現するという目標を掲げ、国内外から人材、投資を呼び込むとともに、バイオテクノロジーのためではなくバイオエコノミー形成の観点からバイオ戦略を策定した。(1)バイオ関連市場の拡大(2)バイオコミュニティの形成(3)データ基盤の整備――の三つが柱となる。そのポイントは以下のとおり。
(1)バイオ関連市場の拡大
産学官の連携を通じて現状の約1.5倍となる総額92兆円の市場規模達成を目指す。例えば、高機能素材などのバイオものづくりでは、今後、市場の拡大が見込まれる分野を中心に支援する。ゲノム解析やAI技術の進展といったデジタル活用とあわせて高度な技術・設備が必要となるため、今後、水平分業化が進展し、基盤技術を確保したプレーヤーが付加価値の源泉を握ることが想定される。
(2)バイオコミュニティの形成
人材・投資を呼び込み、市場に製品・サービスを供給するための体制を欧米を参考にしながら構築する。その一環として、ネットワーク化、活動の可視化、継続的・俯瞰的な成長支援を念頭に、戦略的なバリューチェーンで世界をリードする「グローバルバイオコミュニティ」と、地域に応じた特色ある取り組みを展開する「地域バイオコミュニティ」について、国が登録・認定する仕組みを進めている。前者は東京圏と関西圏の2件の認定を22年4月に、後者は北海道、鶴岡、長岡、福岡の4件の認定と東海の1件の登録を21年6月に公表した。
(3)データ基盤の整備
研究開発や事業化を前提に、異分野を含め幅広く、柔軟なデータ連携を可能とする環境を構築する。バイオ分野のデータ連携・利活用の実務に必要な留意事項をまとめたガイドラインを22年度中に策定する予定である。
【産業技術本部】