経団連(十倉雅和会長)は、ソフトパワーの発揮に向けたエンターテインメント・コンテンツ産業等の振興を目的として、クリエイティブエコノミー委員会(南場智子委員長、村松俊亮委員長)を2022年6月1日に新設した。
8月3日、その第1回会合を開催し、委員会の進め方について認識を共有するとともに、来賓の都倉俊一文化庁長官が日本の文化・エンターテインメント政策のあり方について講演した。都倉氏の講演の概要は次のとおり。
日本は、長年培ってきた伝統・芸術分野にさまざまな財産を数多く有しており、そのポテンシャルは高い。しかし、一つの大きな産業として成り立っているとは言い難い。文化立国を掲げ、文化芸術・エンターテインメントを日本の基幹産業にまで高める必要がある。
そのためには、外貨を獲得できる産業であることが重要である。必要な施策の第1は、インバウンドへの対応である。ポストコロナにおいて、外国人観光客数6000万人は実現可能な目標であり、文化芸術・エンターテインメントにおいてもこれに見合う体制が不可欠となる。具体的には、ナイトタイムエコノミーの充実、中堅アーティストが公演可能な観客数1500~2000人規模の劇場・ホールの整備、制作に対する投資額の拡充、外国人材も活用した制作現場の質的向上等が挙げられる。地下鉄の営業時間等、周辺インフラを含め、人々のライフスタイルを変えていく必要もある。
第2は、日本の可能性を海外に広めるグローバル展開である。まずは誰もが憧れるようなエンターテインメント・文化芸術分野のスターを生み出すことが必要である。この他、日本の文学・小説を面白く翻訳できる人材の育成、ジェトロや国際交流基金、政府観光局等の海外事務所を活用した売り込みも必要である。
こうした施策について、経済産業省とも連携して早期にロードマップを作成し、実行に着手したい。キーワードは、日本でつくったものを売るMade in Japan、世界のどこであっても日本人がつくるMade by Japanese、日本に来ている外国人とも協働してつくるMade from Japanの「F・B・I」である。展開先としては、やはり日本に対する憧れを今も持ち続けるASEAN各国に目を向けるべきだろう。
最後に、海外から日本に来るさまざまなアーティストも含め、日本語教育や働き方に対する施策の充実も不可欠である。文化庁としても環境整備に取り組んでいく。
【産業政策本部】