国際秩序が大きく動揺するなか、日米連携強化への期待はこれまで以上に大きくなっている。そこで、経団連米国事務所は7月7日、戦略国際問題研究所(CSIS)のクリストファー・ジョンストーン上席顧問兼ジャパン・チェアから、日米関係の現状と展望について説明を聴くとともに意見交換した。同氏は、CIA、国防総省、国家安全保障会議(NSC)の役職を歴任し、2022年6月に同研究所に着任した。5月にはNSC東アジア担当部長としてバイデン大統領訪日にも同行した人物である。同氏による説明の概要は次のとおり。
■ 国際課題に共同対処
現在、日米は外交面で足並みがそろっており、両国関係は極めて良好である。鉄鋼、牛肉、新型コロナウイルスの水際対策といった摩擦はあるが、関係に水を差すほどの影響はない。
日米は、良好な関係を基礎に、協調して国際的課題に取り組むフェーズに入った。ウクライナ問題や対中国・北朝鮮といった外交関係に加え、サプライチェーン、輸出管理、サイバーセキュリティ、エネルギー安全保障、気候変動といった問題に共に対処していくことが期待される。
日本からの声は、米国を動かす力になっている。日本が望む米国の環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への復帰が政治的に困難ななか、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の立ち上げというかたちで、米国がアジアに経済面で関与することを政権に促した。近く交渉者協議が開かれ、まずは各交渉分野について、米国の提案が俎上に載ることになるだろう。
■ 防衛・情報協力の現代化
日本は、米国が関与するあらゆる政策分野におけるパートナーとなりつつある。日本の役割の変化を踏まえた両国関係の現代化が必要である。
例えば、日本は防衛費の増額等を通じ、国防体制を再検討しようとしている。これまでは米軍の拠点という側面が強調されてきたが、今後は両国の防衛関連の活動の統合が重要となる。
防衛産業における協力も重要である。日本はアジアにおける最大のパートナーだが、現状、ミサイル防衛等を除き、技術協力は盛んではない。
インテリジェンスの協力も深化が求められる。日本がファイブ・アイズ(米英加豪NZの機密情報共有枠組み)の6番目となるための工程表を策定すべきである。情報セキュリティと関連技術の強化に加え、制度面での対応も必要になるだろう。
■ 経済安保と日米韓関係
サプライチェーン、半導体といった経済安全保障に関係する分野は、最重要項目の一つである。日本は経済安全保障法を成立させたことで、法案を議会で滞留させている米国に一歩先んじている。
経済安保は、日米だけでなく韓国も利害を共有する分野である。対中外交やルールづくりで影響力を発揮していくには、日米韓の協調が欠かせない。日韓の間に歴史認識等の難しい問題があることは理解している。難題には腰を据えて取り組むこととしつつ、まずは防衛、サプライチェーン、半導体といった実務的な分野で、足元から協力が進むことを期待したい。
【米国事務所】