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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年7月21日 No.3553 デジタル時代に即した知的財産制度のあり方 -知的財産委員会企画部会

特許庁は、2022年4月に立ち上げた「特許庁政策推進懇談会」(※)のもと、デジタル化やグローバル化の進展に伴う新たな課題に対応し得る知的財産制度への改善に向けた検討を進め、6月30日、報告書「知財活用促進に向けた知的財産制度の在り方」を取りまとめた。同懇談会では課題の一つとして「NFT(注)化した画像データの意匠権保護」を取り上げ、メタバースなどのデジタル空間におけるデザインの保護のあり方等についても議論した。

そこで、経団連は6月27日、東京・大手町の経団連会館で知的財産委員会企画部会(長澤健一部会長)を開催した。特許庁の吉澤隆総務課長、下村圭子意匠課長らから政策推進懇談会における主な論点、NFTをめぐる課題等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 特許庁政策推進懇談会における検討課題

諸情勢の変化を受けて、現下の喫緊の政策課題は、中小企業・スタートアップ、大学等の知財活用のさらなる促進である。イノベーションの促進、日本企業の競争力強化に向けて、これら環境の変化や新たな課題に対応した知的財産制度に改善するとともに、中小企業・スタートアップ・大学を含むユーザーの利便性を一層高める必要がある。

そこで、特許庁では、有識者を構成員とする特許庁政策推進懇談会を設置し、さまざまな課題について幅広い観点から検討を重ねてきた。検討にあたっては、(1)時代に即した知的財産制度のあり方(意匠の新規性喪失の例外適用手続き等)(2)中小企業・大学・ベンチャー支援(ライセンス促進策の検討等)(3)特許庁自身のデジタル化ヘの対応(書面手続きのデジタル化に向けた関係手続き整備等)――に大別し、計5回にわたり議論を深めた。

■ NFT化した画像の意匠権保護

22年4月に自由民主党が発出した政策提言「デジタル・ニッポン2022~デジタルによる新しい資本主義への挑戦」には、「NFTホワイトペーパー Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略」が盛り込まれている。同提言では、「Web3.0時代の責任あるイノベーションを牽引していくためには、社会基盤やルールを直ちに整備する必要がある」との認識を示し、デジタル空間におけるデザイン保護が、コンテンツホルダーの権利保護上の課題であるとした。

この課題の検討にあたっては、以下の事項に留意すべきである。

  1. デジタル空間におけるデザインの保護について、著作権法や不正競争防止法等、他法域の議論の動向を注視すべきである。
  2. 保護のメリット・デメリットを十分に比較衡量し、関係業界のニーズもよく見極める等の調整が必要である。
  3. 多国間で展開されるメタバースも少なくないことを踏まえ、国際的な議論をリードし協調していくことも重要である。
  4. 権利の実効性の担保のあり方を念頭に置いて議論する必要がある。

特許庁としては引き続き、産業界の意見も踏まえつつ、メタバース内の画像の保護のあり方等について、中長期的な視野から検討を深めていく。

(注)Non-Fungible Token、非代替性トークン。改ざんが困難な取引等の真正性を証明するためのデジタルデータ

※ 特許庁政策推進懇談会
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/kenkyukai/kondankai/index.html

【産業技術本部】

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