経団連(十倉雅和会長)のアメリカ委員会(早川茂委員長、植木義晴委員長、永野毅委員長)は5月26日、東京・大手町の経団連会館で、冨田浩司駐アメリカ合衆国特命全権大使との懇談会を開催した。冨田大使の説明の概要は次のとおり。
■ 米国経済とバイデン大統領の支持率
米国経済はパンデミックから急回復し、2021年の実質GDP成長率は5.7%の高成長を遂げ、失業率も今年3月に3.6%に改善した。一方、地政学リスクが顕在化するなかインフレが加速し、バイデン政権の最大の課題となっている。
バイデン政権発足時の支持率は55.5%だったが、21年8月のアフガニスタン撤退ごろから支持率と不支持率が逆転し、支持率は低迷している。政権発足時に掲げていた政策課題(弱者・家庭・労働組合支援、投票権改革、移民への対応改善、クリーン・エネルギー)は、党内穏健派、共和党の抵抗に直面しており、11月の中間選挙に向けて支持率浮揚に取り組んでいるものの、先行きは不透明とする声が多い。
■ 同盟国・パートナー重視の外交、日米関係
バイデン大統領は、米国を国際社会のリーダーとしての役割を担える国に戻すことを約束している。ウクライナ情勢はあるが、インド太平洋重視の姿勢は不変であり、特に中国を「戦略的競争相手」と位置付け、強い姿勢で臨んでいる。対中戦略におけるトランプ政権との大きな違いは、(1)米国一国ではなく、同盟国・パートナー国と共に中国に向き合うこと(2)貿易制限措置に限らず、経済安全保障や外交的なネットワーキングなど、幅広い政策を包括的に進めていること――である。
日米関係は非常に良好であり、日本は世界最大の対米投資国(20年現在6790億ドル)として、雇用創出(19年現在97万4000人)に貢献している。昨今の国際情勢を受け、日本との協力関係の重要性が増しており、今般のバイデン大統領の訪日はその象徴といえる。
日米関係の焦点を三つ取り上げたい。第1に、インド太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増すなか、日米同盟の抑止力・対処力を早急に強化する方向で一致していること。第2に、両国の競争力・強靱性強化のため、「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」、7月に開催する経済版「2+2」(閣僚レベルの日米経済政策協議委員会)等により協力を拡大すること。第3に、QUAD(日米豪印戦略対話)、AUKUS(米英豪によるインド太平洋の安全保障枠組み)をはじめ、日米同盟を基軸とする同盟国・パートナー国との連携が進展していることである。
今般発足したIPEF(インド太平洋経済枠組み)は、地域の経済秩序への米国の主体的な関与を示すものであり、すでに日米間の協定があるデジタル分野等で具体的な成果を早期に生み出していきたい。同時に、戦略的な観点から米国のTPP(環太平洋パートナーシップ)復帰が最も望ましく、引き続き復帰を促していく。
エネルギー安全保障と気候変動対策の両立など、地球規模の課題も山積している。今後の日米協力において経済界の協力は不可欠であり、官民で緊密に連携し課題に取り組んでいきたい。
【国際経済本部】