経団連は3月8日、金融・資本市場委員会ESG情報開示国際戦略タスクフォースを開催した。SSBJ設立準備委員会の川西安喜委員長、中條恵美委員、桐原和香アシスタントディレクターから、国際会計基準(IFRS)財団が公表した開示基準のプロトタイプの概要と、わが国の「サステナビリティ基準委員会」(SSBJ)の設立に関して、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ ISSBの設立
IFRS財団は、昨年11月に、「国際サステナビリティ基準審議会」(ISSB)の設置を公表した。ISSBの目的は、投資家および資本市場参加者向けに、企業のサステナビリティ情報を提供するための開示基準について、グローバルなベースラインを提供することにある。
IFRS財団では、ISSBでの検討に先駆けて、「技術的準備ワーキング・グループ」(TRWG)を設置し、ISSBにおける開示基準のベースとなるように、技術的な提言を行っている。TRWGは、すでに、「全般的要求事項のプロトタイプ」「気候関連開示のプロトタイプ」を公表している。
■ TRWGプロトタイプ
TRWGプロトタイプの開示要求は、国際基準のベースラインとしては、非常に細かい内容となっている。
(1)全般的要求事項のプロトタイプ
同プロトタイプでは、サステナビリティ報告の基本事項を定めている。報告の対象は、財務報告と同様であり、企業集団、連結単位での開示が想定されている。報告頻度については、少なくとも12カ月ごとに財務諸表と同時とし、報告媒体については、財務報告の一部として開示するとされている。
また、開示を行う際の「重要性(Materiality)」の考え方も規定されている。これは、「その情報を開示しない場合に、投資意思決定に影響が出るような情報」は重要性があることから省略してはならない、という考え方である。財務報告における「重要性」と概ね同様である。
さらに、開示の要求事項のテンプレートとして、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標および目標」の4つの開示項目を定めている。
(2)気候関連開示のプロトタイプ
気候関連開示のプロトタイプでは、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標および目標」について、開示項目を規定している。「指標および目標」では、自社の温室効果ガス(GHG)排出量を意味する「Scope1、2」のみならず、自社以外のサプライチェーンにおけるGHG排出量を意味する「Scope3」の開示も規定されている。
また、同プロトタイプでは、11セクター・68分類の産業セクターにわたる産業別の要求事項も規定されている。これは、米国の「米国サステナビリティ会計基準審議会」(SASB)スタンダードの産業分類を踏まえた内容であり、わが国の産業分類(証券コード協議会が定める分類)とは整合しない。企業が複数の産業にまたがる事業を営む場合の開示方法は現時点では不明だが、開示は限定される必要がある。
■ SSBJの設立
今年7月に、ISSBのカウンターパートとなるSSBJが設立される。一方で、サステナビリティ開示基準の国際的な議論が進んでいることから、同年1月にSSBJ設立準備委員会を設置し、TRWGプロトタイプを検討している。ISSBから気候関連基準等の公開草案が公表されれば、オールジャパンで意見を発信していきたい。
【経済基盤本部】