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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年3月31日 No.3539 社会課題へのインパクトに資するイノベーション、ESG投資・スチュワードシップ活動 -金融・資本市場委員会建設的対話促進ワーキング・グループ

左から関氏、真貝氏、ビルバーン氏

経団連は2月28日、金融・資本市場委員会建設的対話促進ワーキング・グループ(銭谷美幸座長)をオンラインで開催した。大和ハウス工業の関沙織IRグループ長から、インパクト創出に向けたイノベーションやそれを生み出す組織風土の醸成について、また、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(GSAM)のクリス・ビルバーン スチュワードシップ責任推進部長ならびに真貝允株式運用部ヴァイス・プレジデントから、ESG投資やスチュワードシップ活動について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ 大和ハウス工業の取り組み

大和ハウス工業では、創業者の「どういう商品や事業が世の中のためになるか考えろ。会社は社会の公器やからな」という言葉を大切にし、世の中の役に立つ事業の推進によるCF(キャッシュフロー)の創出と、社会変化に対応する基盤の強化によるサステナビリティの向上によって、社会的インパクトを創出し、企業価値を高めている。

ハウジング領域の事業では、レリジエントな社会に向けて従来の対面に加えて、オンラインでの営業に取り組んでいる。コロナ禍も踏まえて、デジタルを活用したウェブ限定販売の住宅商品は顧客から好評を得ている。

ビジネス領域では、eコマースの進展に対応する先進的な物流施設を提供している。棟数、延床面積ともに国内ナンバーワンを誇る。物流現場の労働力不足・高齢化、働き手の健康維持への貢献に向け、施設の建設開発にとどまらず、他社企業とも業務連携しながら、ロボット等を活用したより効率的な物流オペレーションのサービスもあわせて提供している。

まちづくりでは住宅団地の“再耕”に取り組んでいる。具体的には、(1)高齢者や障がい者でも就労できる農業施設の整備と就労時の健康管理ができる仕組みづくり(2)自動運転などの利便性の高い移動手段の提供による住民の健康維持に向けた実証事業(3)再生可能エネルギー100%のまちづくり――などである。

また、イノベーションを創出する組織風土の醸成に向けて、パーパスの策定に取り組む。その過程では、全従業員の意見を集約したのはもちろん、役員と従業員との討議、さらには多様なステークホルダーとの対話を行い、マテリアリティ(重要課題)の特定を進めている。

今後は、中期経営計画の推進により策定したパーパスの実効性を高めていく。同時に、時間軸とストーリーを持ちながら、インパクトを投資家に示していきたい。

■ GSAMの取り組み

GSAMの株式運用部では、ESG(環境・社会・ガバナンス)情報を将来の企業価値に影響を及ぼす情報だと考えている。つまり、優れたESGへの取り組みが、将来の収益力を高め、資本コストの低下を促し、株価を押し上げる要因になるととらえている。

またESGインテグレーション、ESGエンハンスト、ESGインパクトという3つの段階で、ESG投資を定義している。特にESGインパクトは、他の2つと比較して新しく、発展形である。株式投資としての経済的なリターンと両立するかたちで社会的インパクト、すなわち問題解決に向けたソリューションを提供する企業に投資して、社会にポジティブなインパクトをもたらそうとする取り組みである。

ESGインパクト投資における企業評価では、現在の売り上げのみならず、関連分野の売り上げ見込みやインパクト創出を期待させる指標など、将来性を重視している。現時点の売上割合は小さくとも、潜在的なインパクトがあれば投資対象となり得るため、企業によるインパクト関連情報の提示は望ましい。投資実施後には、投資先企業を通じたGHG排出や廃棄物の削減量、節水量といったインパクトを測定し、取り組みの実効性を確認している。こうしたインパクト情報は、アセットオーナーにとっても重要と考える。

GSAMのスチュワードシップ活動は、主に(1)気候変動への対応の加速(2)多様性の向上・包摂的成長の促進(3)強固なコーポレート・ガバナンス基盤の構築――の3点である。特に、気候変動エンゲージメントキャンペーン2.0として、炭素集約型産業のうち、炭素削減目標を設定していない企業に目標設定を強く働きかけていく。

また2020年に当社の議決権行使方針を改訂し、多様性を促進する観点から、投資先企業が取締役会に1名も女性を登用していない場合、指名委員会のすべてのメンバーや経営トップの選出に反対票を投じることとした。22年は方針をさらに引き上げて、女性取締役の比率を最低10%以上と指定している。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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