経団連は3月7日、宇宙開発利用推進委員会の企画部会(原芳久部会長)と宇宙利用部会(田熊範孝部会長)の合同会合をオンラインで開催した。文部科学省研究開発局の福井俊英宇宙開発利用課長から、同省における宇宙分野の研究開発の取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
政府は2020年6月に現行の宇宙基本計画を閣議決定し、宇宙開発戦略本部において21年12月に工程表を改訂した。宇宙開発戦略本部には、文部科学大臣をはじめすべての国務大臣が本部員として参加している。
政府全体の宇宙関係予算は、令和4年度当初予算案と令和3年度補正予算を合計すると5219億円であり、前年度より723億円増えた。文科省の宇宙関係予算は、関係府省で最大の2212億円であり、全体の42%を占める。宇宙分野における研究開発について、以下の5点を中心に取り組んでいる。
1点目は、ロケット開発である。わが国の宇宙活動の自立性を確保するため、基幹ロケットの運用・開発に取り組んでいる。
その1つ目であるH-ⅡAロケットについては、三菱重工業に打ち上げを移管して運用中であり、高い打ち上げ成功率(98%)を誇る。2つ目のH3ロケットについては、打ち上げコストをH-ⅡAから半減し、衛星打ち上げニーズへの柔軟な対応などを目指して開発中である。試験機初号機のエンジンに不具合が生じたことから、今年1月、今年度の打ち上げを延期した。3つ目の小型衛星等の打ち上げに使用するイプシロンSロケットは開発中であり、実証機を23年度に打ち上げる予定である。
昨年6月、革新的将来宇宙輸送システムの実現に向けたロードマップを策定した。ロケットの再利用にも取り組むことにより、40年代前半に、H3ロケットの後継機を10分の1のコストで打ち上げたい。
2点目は、人工衛星の開発・運用である。観測データは災害予防や災害発生後の対応能力を向上させ、地球規模課題の解決に貢献している。「だいち2号」は、昨年7月の静岡県における土砂災害の状況の把握に活用された。「いぶき」は、全地球の二酸化炭素やメタンの排出量を計測・算定した。
近年、低軌道での衛星コンステレーション(衛星群)の構築が急速に進んでいることを踏まえ、産業・科学技術の総合的基盤を強化する必要がある。小型・超小型衛星の先端技術の機動的な開発・実証や、企業や大学に実証の機会を提供するプログラムを実施している。
3点目は、宇宙科学・探査である。火星衛星探査計画(MMX)の探査機を24年度に打ち上げ、火星の衛星「フォボス」から試料の回収を目指す。
4点目は、有人宇宙活動である。国際宇宙ステーション(ISS)において有人輸送技術や有人宇宙滞在技術などを獲得した。米国が進めている月面探査を行う「アルテミス計画」において、わが国は月周回有人拠点「ゲートウェイ」に機器などを提供するとともに、宇宙飛行士を「ゲートウェイ」経由で月面に送り込む。
5点目は、産業連携・人材育成である。宇宙機器産業とベンチャー企業等の協働を促進するため、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による「宇宙イノベーションパートナーシップ」など新事業創出の取り組みを支援している。宇宙航空科学技術推進委託費を活用し、企業や大学の宇宙航空人材を育成するプログラムを実施する。
【産業技術本部】