経団連は3月1日、アジア・大洋州地域委員会ASEAN経済連携強化部会(田中秀幸部会長)をオンラインで開催した。池谷巌経済産業省通商政策局アジア大洋州課長と星野昌志資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部政策課国際室長から、「ポストコロナ時代の新たな日ASEANの経済協力」について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ ASEAN地域の重要性
海外進出する日本企業の約3割がASEANを拠点にしている。日本の製造業の累積投資額は他国を圧倒し、首位である。またASEANは、高いGDP成長率を誇り、2030年にはGDP規模が日本に迫るとの試算もある。GAFAや中韓企業が積極的に投資するなど同地域は国際競争の主戦場になっており、重要性が増している。従来の製造業中心の協力のあり方では、日本は優位性を失うおそれがあり、今後のビジネス戦略を再考する必要がある。
■ 日ASEAN経済強靱化アクションプランの実行状況
そうした状況下、日本政府は、20年7月に「日ASEAN経済強靱化アクションプラン」を公表した。すでに、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の発効や、生産拠点の多元化支援によるサプライチェーンの強靱化、デジタル技術を活用したASEANの課題解決など、各分野で具体的な進捗がみられた。また、同年、日本政府とASEANとの間で立ち上げたイノベーティブ&サステナブル成長対話(DISG)では、日ASEANビジネスウイークを開催し、日本国内の意識変革に取り組んでいる。
今後、ポストコロナの成長実現に向け、同アクションプランを着実に実行・拡充していく。あわせて産業、都市部、地方のそれぞれのイノベーションおよびサステナビリティに焦点を当てた取り組みなど、民間の関与も一層強化しながら、日ASEAN協力を深化していくこととしている。
■ 日ASEANで未来の共創を
今年1月に萩生田光一経済産業大臣はインドネシア、シンガポール、タイの3カ国を歴訪し、タイのプラユット首相を含む13人の閣僚、33人の日系企業の代表と意見交換した。2年ぶりの経産相の訪問に各国政府・現地産業界から極めて高い評価を得た。インドネシアでは、ポストコロナを見据えたアジアでの経済協力の方向性を示す新たなイニシアティブとして「アジア未来投資イニシアティブ」(AJIF)を公表した。
今後は、21年5月に公表した「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ」(AETI)と合わせて、(1)グローバル・サプライチェーンのハブとしての地域の魅力向上(2)社会課題解決につながるイノベーションの創出(3)エネルギー・トランジションの加速――の3つの未来像の実現に向け、連携していく。
【国際協力本部】