経団連は2月24日、開発協力推進委員会(安永竜夫委員長、遠藤信博委員長)を開催し、滝崎成樹内閣官房副長官補から「インフラシステム海外展開戦略2025」(海外展開戦略2025)を踏まえた政府の取り組みについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 「インフラシステム海外展開戦略2025」を策定
政府は2013年に「インフラシステム輸出戦略」を策定し、官民一体となった取り組みを推進してきた。受注額は10年の10兆円から19年には約27兆円に達し、「20年に約30兆円」の目標に向けて増加基調にある。
近年の情勢の変化を踏まえ、20年12月、21年から5年間の新たな目標を掲げる「インフラシステム海外展開戦略2025」を決定した。同戦略では、効果KPI(25年の受注額34兆円)の設定、首相自らのトップセールスなど行動KPIに関する新たな目標およびモニタリング指標の設定方針を織り込んだ。
■ 3つの目的、8つの具体的施策を通じてインフラシステムの海外展開を推進
海外展開戦略2025の目的は、(1)カーボンニュートラル、デジタル変革への対応を通じた経済成長の実現(2)展開国の社会課題解決・SDGs達成への貢献(3)「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の実現――の3つである。
具体的施策は8本柱となっている。コアとなる技術の確保、質の高いインフラと現地との協創の推進などに加えて、21年6月の「ポストコロナを見据えた新戦略の着実な推進に向けた取組方針」(取組方針)において、コロナ禍の継続や目下の重要政策課題に対応するため、カーボンニュートラルへの貢献に関する途上国等への働きかけ、新型コロナウイルスに関する資金ニーズへの対応等を追補した。新型コロナ対応としては、JBICの新型コロナ危機対応緊急ウインドウ、NEXIによる保険金支払い、JICAの新型コロナ危機対応緊急円借款など公的金融スキームによる支援等を実施した。
■ 環境変化を踏まえた重点課題・戦略改定の視点
21年夏以降、新内閣の発足や、COP26をはじめとする首脳級会合の開催など、インフラの海外展開を取り巻く環境が大きく変化している。戦略のさらなる改訂が必要であり、現在、(1)ポストコロナを見据えたより良い回復(BBB=Build Back Better)として位置付けられる公的支援スキームや企業のデジタル変革を後押しする仕組み(2)AETI(アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ)やJCM(二国間クレジット制度)の拡大など、脱炭素社会に向けたトランジションの加速(3)FOIPを踏まえたパートナーシップの推進――といった取り組みを踏まえ、海外展開戦略2025の改訂に向けて議論している。
■ KPI達成に向けた取り組み
効果KPIの実現に向けて、21年6月の取組方針で、分野別アクションプランを策定した。同アクションプランでは、ユーティリティ、モビリティ・交通、デジタルなどの各分野について、調査ステージ、計画ステージ、受注・成約ステージのそれぞれの段階の進捗状況を半期ごとにフォローアップし、案件形成に向けて着実に支援していく。21年12月時点のフォローアップでは、民間企業が行っているさまざまな取り組みを支援できるよう、内閣官房で把握する案件数を拡大した。これらの取り組みを通じて省庁間連携の基礎をつくるとともに、適切な支援を行うこととしている。
政府は、経済界と連携しながら、引き続きインフラ海外展開を積極的に推進していく。
【国際協力本部】