経団連は2月21日、ロジスティクス委員会物流部会(坂元誠部会長)をオンラインで開催した。流通経済大学流通情報学部の味水佑毅教授から、物流標準化の背景やその推進に向けた考え方、取り組み等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 標準化が必要な背景
2024年にトラックドライバーの時間外労働について罰則付きの上限規制が課されるため、運輸業界の労働環境の改善が急務となっている。これに対応するには、わが国全産業の平均を下回っている運輸業の労働生産性を向上させることが不可欠であり、パレットをはじめ物流標準化への社会的な要請が高まっている。
パレットの生産枚数について、中国や韓国と比較すると、わが国では、主要パレット(T11型〈1100ミリメートル×1100ミリメートル〉と12型〈1200ミリメートル×1000ミリメートル〉)の比率が相対的に低水準にあり、主要パレットへの集約という点で後れを取っていることがわかる。さまざまなサイズ・仕様のパレットが使用されていることから、トラックへの積載効率や倉庫での保管効率の低下、積み替え作業の発生、倉庫等への自動化機器の導入阻害によるデジタルトランスフォーメーションの遅れ、着荷主側での管理コストの増加等が生じており、早急に取り組む必要がある。
■ 標準化の推進に向けて
物流標準化は20年以上前から議論されているものの、推進が困難な領域である。サプライチェーンマネジメントや経営管理、競争戦略の視点から分析すると、物流標準化は必ずしも個別企業の競争優位や利益確保につながるとは限らないため、総論賛成・各論反対になりやすい。推進方策として、生産性の向上など社会全体のメリットを最優先に高い理想を掲げて進めていく方法もある。一方、社会全体のメリットを基礎としつつも、標準化の啓発を通じて関係する企業を巻き込みつつ、個社の利害得失も考慮しながら進めていく考え方もあるだろう。いかに多くの企業の関与を得て進めていくかを考える必要がある。
こうしたなか、政府は今年度策定した「総合物流施策大綱」において、物流を構成するソフト・ハードの各種要素の標準化の重要性を強調している。その推進に向けて「官民物流標準化懇談会」を立ち上げ、その下に「パレット標準化推進分科会」を設置した。同分科会の座長としても、パレットの規格と運用方法の両面から議論に取り組み、わが国の生産性に資する物流標準化を後押ししていきたい。
【産業政策本部】