経団連では2014年度から、東京工業大学のイノベーション人材養成機構と共に、将来産業界での活躍を志向する同大学博士後期課程の学生向けの講座「プロダクティブリーダー教育院(PLP)発展研修プログラム」を開講している。同講座は全3回の集中講座で、企業人が講義を行うとともに学生にビジネスにおける課題を提示し、学生がグループ討議を通じてその対応策をまとめるというPBL(Project Based Learning)型の教育プログラムである。今年度は日本電信電話(NTT)の協力を得て実施した。
12月20日の1回目の授業では、講師の小橋川哲NTTコンピュータ&データサイエンス研究所主幹研究員が、NTTが各分野で推し進めているデジタル化の取り組み事例やIOWN構想(注)などを説明した。その後、「研究開発成果を事業につなげていくための戦略を立案せよ」との課題を提示。同講座を担当する和泉章特任教授のコーディネートのもと、13名の学生が研究テーマごとのグループに分かれて課題に取り組んだ。各グループにはNTTグループの研究員が配置され、ファシリテーターの役割を担った。
2回目の授業は、新型コロナウイルス対策に十分配慮したうえで、1月17日にNTTの武蔵野研究開発センタで実施した。学生は、同センタ内の技術史料館でNTTグループの電気通信技術を見学して理解を深めた後、グループワーク、中間発表に臨んだ。
新型コロナの感染拡大防止のため、オンラインで行った2月1日の最終授業では、各グループから熱のこもったプレゼンテーションが行われた。プレゼンテーションの後、小橋川氏やファシリテーターを務めた研究員らが、「すべての発表に、利益を上げつつ社会課題の解決に取り組むという観点が盛り込まれていた」「難しいテーマに対しワクワクする提案を出してきたことに感心した」などと講評するとともに、学生を交えて活発に意見を交わした。最後に和泉氏が、「企業は、博士課程を修了した研究員に、自らアジェンダを見つけて解決策を見いだし、人を説得して動かすことを求めている。この授業にはそのエッセンスが凝縮されている。身につけた能力をさまざまな場面で活用してほしい」と総括した。
同講座について、学生からは、「異なる専攻のメンバーとチームを組んで事業のアイデアを提案するのは、キャリア形成において有意義な経験だった」などの感想が寄せられた。
(注)NTTが2030年ごろの実用化に向けて推進している次世代コミュニケーション基盤の構想
【SDGs本部】