春季労使交渉・協議が本格化するなか、6回にわたり同交渉・協議の焦点等を解説する。2回目は、経営側の基本スタンスを取り上げる。
Q 今年の春季労使交渉・協議の前提となる経営環境をどのように認識していますか。
A コロナ禍の影響が長期化するなか、半導体等の供給制約や、資源価格の上昇、感染の再拡大など不透明感が強い状況が続き、企業業績は業種や企業でばらつく「K字型」回復の様相を呈しています。また、地域経済の状況もさまざまとなっています。
Q そのような状況のもとで行われる労使交渉・協議における経営側の基本スタンスを教えてください。
A 今年も、社内外のさまざまな考慮要素を総合的に勘案しながら、適切な総額人件費管理のもと、自社の支払能力を踏まえ、労使交渉・協議を経て、自社に適した対応を行う「賃金決定の大原則」に則って検討し、「賃金引き上げ」と「総合的な処遇改善」に取り組んでいく方針に変わりはありません。
特に、大切なステークホルダーである働き手と共に生み出した収益・成果を適切に分配することが重要と考えています。
Q 賃金決定にあたっての検討の方向性を教えてください。
A 業種や企業による業績のばらつきが拡大するなか、業種横並びや一律的な検討は現実的ではありません。「成長と分配の好循環」実現への社会的な期待なども考慮しながら、企業として主体的に検討することが望まれます。
基本給について、収益が高い水準で推移・増大した企業には、制度昇給の実施に加え、ベースアップの実施を含め、積極的な賃金引き上げを呼びかけています。他方、収益が十分に回復していない企業には、事業継続と雇用維持を最優先にしながら、労使が徹底的に議論し、自社の実情にかなった対応を検討してほしいと思います。
諸手当については、例えば、テレワークなど柔軟な働き方の進展を踏まえ、自社の諸手当を再検討し、必要に応じて見直すことが考えられます。
賞与・一時金(ボーナス)は、短期的な収益の動向を反映する原則・趣旨を踏まえ、収益が増大した企業には適切な分配・支給水準の引き上げを、収益が減少した企業には支給水準のあり方や支給方法を含めた検討を求めています。
Q 総合的な処遇改善については、どのように検討すればよいでしょうか。
A 総合的な処遇改善は、企業が働き手に対して成果を分配する主要な方策です。「人への投資」となり得る重要な施策と位置付け、「働きがい」と「働きやすさ」の両面から考えることが有益といえます。
「働きがい」を高める施策としては、デジタルリテラシー・スキル向上など自社の変革を担う人材に必要な能力開発を促し、その成長を支援することがカギとなります。
「働きやすさ」の向上施策では、フレックスタイム制や裁量労働制など柔軟な労働時間制度の導入・拡大、育児や介護などを抱える社員への仕事との両立支援策の拡充などが考えられるでしょう。
Q こうしたさまざまな事項を検討し実現していくにあたって、特に大事なことは何でしょうか。
A 企業を取り巻く経営環境が激変するなか、企業の発展と働き手の成長をともに実現するためには、労使一体による「協働」が不可欠です。企業と労働組合は「経営のパートナー」として、未来を見据えながら、自社の諸課題にとどまらず、事業活動を通じて社会課題の解決にともに取り組んでいく、未来志向の労使関係を目指すことが望まれます。
【労働政策本部】
- 春季労使交渉・協議の焦点(全6回)
- 〈1〉連合の春季生活闘争方針
- 〈2〉経営側の基本スタンス
- 〈3〉働き方改革深化の重要性
- 〈4〉日本型雇用システムの見直し
- 〈5〉育児・介護休業法の改正
- 〈6〉雇用保険法の改正
- 〈2〉経営側の基本スタンス