経団連は1月12日、東京・大手町の経団連会館で教育・大学改革推進委員会(渡邉光一郎委員長、小路明善委員長、橋本雅博委員長)を開催した。上智大学の曄道佳明学長から、同大学における新しい教育への取り組みについて説明を聴くとともに懇談した。概要は次のとおり。
■ 国際性を強みとする上智大学が目指すグローバル化
本学では、コロナ禍以前は2000名程度の留学生が四谷キャンパスで学んでいたほか、6学部9学科に英語のみで学位取得が可能なプログラムを有している。また、世界のリーダーとの対話の機会を提供するとともに、海外でのスタディツアーやグローバルインターンシップなどの機会も設けている。
多様性あるキャンパス環境を維持するうえで、優秀な外国人教員や留学生の確保が不可欠である。彼らへの求心力を維持するために、日本および本学の教育・研究水準の国際通用性を高める必要がある。国内の多くの大学がグローバル化を標榜するなか、国際性が強みの本学は、個性的で希少性があり、模倣困難な取り組みを行うことにより、引き続き競争優位を維持したい。
■ 上智大学の全学共通教育体系
本学は、すべての学生が主体的な学修により、知を深め、智を創造し、これを生涯にわたって継続する基盤を身につけられるようにしたいと考えている。学生が智を創造できるよう、大学は豊かな人間性や広い教養、高い専門性等を修得できる教育を行う必要がある。また、学生が学びの自由度を向上させ、自らの学びをデザインすることで、主体的に学修できる環境を提供することも重要である。そこで全学共通教育について、2022年度に、(1)人間の精神性と身体性(人間理解)(2)思考と表現、データサイエンス(思考の基盤)(3)課題認識と多角的視座、経験・実践(知の展開)――を柱とする体系へと改編する。
■ 遠隔教育の活用
遠隔教育の活用によって、経済的・時間的理由で実留学を諦めていた学生のオンライン留学が可能となるなど、学びの自由度が高まるとともに、学生が主体的に学びをデザインできる環境の拡大が期待できる。一方、大学の立場からすれば、海外大学との連携を探る過程で、教育・研究の国際通用性がリアルタイムで問われることになる。
本学は、主に米国大学と連携してCOIL(Collaborative Online International Learning、海外連携型協働学習)型授業を行っており、日米双方の学生が議論やグループワークを通じて学びを深めている。一方、担当教員は、授業内容の交渉や教授法のすり合わせに加え、学生の学力、言語運用能力のギャップなどもあって、授業の開発に相応のエネルギーを要しており、授業の国際通用性を認識する機会となっている。
■ 社会人の学びの場
社会人の学びの場として、「プロフェッショナル・スタディーズ」を開設している。これは実業の第一線の役割を担う人材の人間的成長を目的とした教育プログラムであり、経団連の会員企業との協働により学びの場を創成している。
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懇談終了後、提言「新しい時代に対応した大学教育改革の推進(案)」および「採用と大学改革への期待に関するアンケート結果(案)」を審議し、了承した。(1月20日号参照)
【SDGs本部】