経団連は12月14日、「2021年版 経済・産業の動向と当面の政策課題に関する報告書」を公表した。2回目は、コロナ禍による影響が大きい産業に関する分析を紹介する。
コロナ禍が長期化するなかで、K字回復の様相が続いている。特に対面型のサービス産業では、公衆衛生上の行動制限措置の影響を受けて、売上が下押しされ、業績が著しく悪化している。当面の政策課題として、これらの産業における雇用維持や事業継続への政策的な支援が重要である。
■ 宿泊
延べ宿泊者数は、20年末から21年始めの新型コロナウイルス感染拡大を受けた再度の全国的な緊急事態宣言の発令により落ち込んだ。その後、低位で推移し、秋に緊急事態宣言が全面的に解除された後、減少幅が小さくなっているが、依然として21年11月の数字は19年同月比3割減と低い。
足元でオミクロン株の感染が拡大しており、当面の急回復は見通しにくい状況となっている。加えて、オンライン会議等の普及により、ビジネス需要はコロナショック前の水準まで戻らないとの見方もある。
■ 外食
テークアウト需要が期待できるファーストフードが比較的堅調に推移する一方、それ以外の業態は、20年末以降、再び苦戦した(図表1参照)。特に、パブレストラン・居酒屋は、足元で回復しているものの、極めて厳しい状況にある。
外食産業の主要な上場企業の業績は、20年度の赤字から、21年度には黒字化を見込んでいる。売上予想が回復しない企業においても、収益体質を改善させているとみられる。
■ 交通
鉄道旅客は、全般的に低迷が続いている。特に長距離の輸送を担うJRが、21年10月において19年同月比4割減の大幅マイナスと、厳しい状況が続いている。背景には、リモートワークの進展による通勤需要の低下や、オンライン会議の普及による出張需要の減少などがある。新型コロナ後もこれらの行動変容がある程度続き、需要が元に戻らないとの見方もある。
航空旅客輸送のうち、国内線は20年末からの感染再拡大等の影響を受けて再び落ち込み、低迷した。足元で回復しているものの、水準は低く、21年11月は19年同月比4~5割減となっている(図表2参照)。国際線は、19年対比で1割程度と極めて低い水準にとどまっている。今後の回復が期待されるが、オミクロン株の感染拡大により、先行きが見通しにくくなっている。
次回は、主要な政策課題について解説する。
【経済政策本部】
- 解説「2021年版 経済・産業の動向と当面の政策課題に関する報告書」
- 〈上〉マクロ経済の現状と見通し
- 〈中〉コロナ禍による影響が大きい産業の現状と見通し
- 〈下〉主要な政策課題
- 〈中〉コロナ禍による影響が大きい産業の現状と見通し