経団連は12月7日、オンラインで金融・資本市場委員会(太田純委員長、日比野隆司委員長、林田英治委員長)を開催した。金融庁の中島淳一長官から、「金融行政の当面の課題と対応」について説明を聴き意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ デジタル化の推進とリスクへの備え
コロナ禍をきっかけに、対面・紙が前提のビジネスが大きく変わり、デジタル化が促進された。マイナンバーと預金口座のひも付けや公的給付のための口座登録など、行政のデジタル化を精力的に進めていく。
ビットコインの登場以降、分散台帳ネットワークを利用した分散型金融が拡大しており、トラブル発生時の管理主体が不明瞭であることが課題となっている。法定通貨に価値が連動するステーブルコインが日本でも登場しつつあり、今後の利用拡大に備えて法整備を検討している。
デジタル化への対応の一方、リスクへの備えも重要である。システムの複雑化に伴い障害も生じやすくなるため、障害の抑制と顧客被害を最小化する努力が非常に重要である。地道に取り組むことでイノベーションを進めていきたい。
■ サステナブルファイナンスの推進
2020年、菅政権は発足時に2050年カーボンニュートラルを表明し、国内で本格的な政策の議論を開始した。COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)でも金融に関する施策が大きく取り上げられ、IFRS財団がISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の設置を表明した。サステナビリティ開示基準は気候変動にとどまらず、生物多様性や人権等の分野にも及ぶものである。日本としてISSBに意見発信するにあたり、経団連の役割は非常に大きい。われわれも最大限支援していきたい。
金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループでは、サステナビリティに関する開示の検討を進めている。気候変動に限らず、人的資本投資を進めるための非財務情報開示の充実についても議論している。産業界の声も聴きながら、日本の成長につながる開示制度をつくっていきたい。
脱炭素に向けた投資を促すためには、トランジションを推し進めることが重要である。カーボンニュートラルへの移行のロードマップを作成し、資金を供給していく必要がある。トランジションボンドが活発に取引され、トランジションに対して資金が行きわたる環境にしていきたい。
■ 資本市場の活性化
日本は間接金融の比重が高く、資本市場への資金供給の加速にさまざま取り組んできた。供給した資金からリターンを得るためには、企業価値が中長期的に向上することが重要である。そのために、継続的にコーポレートガバナンス改革を推進してきた。22年4月の新市場区分への移行は、東京証券取引所が内外の投資家にとって魅力ある市場となることを最大の目的としており、企業価値の向上がインセンティブとなる市場構造にしたい。
あわせて、スタートアップに対する成長資金の円滑な供給に取り組む。岸田政権でも重要な柱として掲げられている。IPOの値付けやSPAC(特別買収目的会社)等、利用者保護や開示制度との関係にも注意しながら、スタートアップの成長につながる仕組みを検討したい。
【経済基盤本部】