経団連は12月14日、企業行動憲章 実行の手引き「第4章 人権の尊重」(手引き)を改訂するとともに、「人権を尊重する経営のためのハンドブック」(ハンドブック)を公表した。
■ 背景
2017年に企業行動憲章を改定し、第4条「すべての人々の人権を尊重する経営を行う」を新設したが、ビジネスと人権をめぐる国内外の状況はここ数年で急激に変化している。具体的に、日本政府は20年10月に国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」(指導原則)に基づいて「行動計画(NAP)」を策定し、日本企業に対して国際的に認められた人権の尊重等への期待を表明したほか、欧米諸国では、法制化を通じて、人権への取り組み強化を求める動きが加速している。
一方、20年に経団連が実施したアンケート結果によれば、指導原則に基づいて取り組んでいる企業は3割にとどまっている。こうした状況を踏まえ、指導原則の周知を図り、ビジネスと人権に関する企業の自主的取り組みを推進するため、手引きを改訂するとともにハンドブックを策定した。
■ 手引き第4章改訂のポイント
手引きには、経営トップに向けて、人権への取り組みの重要性を理解し、実践するうえで必要な事項を記載している。
第一のポイントは、人権をめぐる国内外の状況認識について、冒頭の「背景」で解説していることである。とりわけ、指導原則の3本柱の一つである「人権を尊重する企業の責任」を果たすうえで、企業が人権リスクや課題に対して自主的に取り組むことの重要性を強調している。人権の概念は広範で、企業の業種や規模、事業を行う国・地域によって直面する課題が異なる。各企業が直面するリスクや課題に対して、自社の状況に応じて創意工夫をこらし、改善しながら自主的に取り組むことが最も効果的である。
第二のポイントは、内容の一層の充実を図ったことである。例えば、項目4-3では、指導原則が企業に求めている運用上の原則に従って、人権デュー・ディリジェンス(DD)(注)を適切に実施するための姿勢や具体的なアクション・プラン例について、項目4-4では人権侵害が発生した場合の是正について、それぞれ詳説している(図表参照)。
■ ハンドブックの位置付け
ハンドブックでは、担当役員や実務担当者向けに、実践に役立つ、より具体的な情報を提供している。
第一部「人権を尊重する経営の実践」では、人権DD等の実践について、手引きの項目に沿って取り組み事例を示しながら解説するとともに、企業が国内外の事業活動で直面している課題等について、Q&A方式で説明している。
第二部「ビジネスと人権を巡る最新動向等」では、国際社会で注目される人権課題や人権課題に対応する連携イニシアティブなどを紹介している。
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経団連は、引き続き多様なステークホルダーとも連携しながら、会員企業への周知・情報提供など、日本企業の自主的取り組みの加速に向けた活動を展開していく。
(注)デュー・ディリジェンス=「負の影響を回避・軽減するために相当な注意を払う行為または努力」といった意味。詳細は手引きおよびハンドブックを参照
【SDGs本部】