経団連は11月18日、ダイバーシティ推進委員会企画部会(工藤禎子部会長)をオンラインで開催した。新生銀行の林貴子常務執行役員・人事担当、TPOのマニヤン麻里子社長から、「日本的雇用慣行からの脱却や組織風土、カルチャー改革に関する取り組み」について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ 新生銀行の取り組み~これからの日本企業の人事パラダイム
新生銀行では、イノベーションを創出するうえで人的資本が最も重要なことから、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の徹底を企業戦略の大方針と位置付けている。多様な人材が活躍できる環境を整備するには、長期雇用・メンバーシップ型を前提とした人事制度・組織運営の根幹から仕組みを変えていく必要がある。
変化の激しいビジネス環境のもと、雇用・就労形態を問わず必要なスキルのある人材を獲得し、高いパフォーマンスを発揮できるよう育成していくことが重要である。例えば兼業や副業は、社内ではできない経験や新たなネットワークを得ることができる。こうした活動を通じて、社員が社外で活躍することは、キャッシュアウトのない人材育成ともいえる。企業は、社員が辞めても、日本社会に優秀な人材を輩出するという視点が必要である。
個人にとってそれぞれの能力を活かせる多様な就労機会があり、それを自由に選択できることがセーフティーネットとして機能する社会とすべきである。企業と個人が対等な立場で、ビジョンを共有し信頼感でつながりつつも、その境界線がいつもリビルドされている。これが、日本の目指すべき姿ではないかと思う。
■ TPOの取り組み~働く人々のライフから考える風土改革
当社は、日本初のコーポレート・コンシェルジュ会社で、企業向けに、社員へのライフサポートサービスを提供している。
コロナ禍以降、自宅が職場となり、ワークとライフは空間では切り離せなくなっている。ワークとライフ両方とも一生懸命に取り組む生き方は基本である。多様なライフスタイルを前提とした新しい制度設計や環境構築が、企業の優秀な人材の採用やウェルビーイングな組織風土につながる。
働く人のプライベートに関する課題は、そのストレスの半分以上を占めるといわれており、これを無視することはできない。今後は、職場が働く人のプライベートを「公私混同」として排するのではなく、「公私融合」としてとらえ、多様な人材に対して、ワークとライフをセットで考え、多様な人材の希望に合わせてカスタマイズしたサポートや制度設計が必要不可欠である。
価値観や働き方、生き方が変化しているなかで、個人や家族のプライベートも大切にしながら、働く人が高いパフォーマンスを維持できる企業とすべきである。働く人の生産性を上げるために、私生活までサポートできる企業が、強い競争力を持つ。職場でも私生活でも幸せな人が増えるほど社会は豊かになる。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】