経団連(十倉雅和会長)は11月16日、提言「DFFT推進に向けたデータ流通政策」を公表した。提言では、信頼性のある自由なデータ流通に向けて、データ流通全般のルール等に関する経団連の考えを示した。
■ データ流通の基盤
データ流通促進に向けたルールについて、プラットフォームの利用を促進するようなデータの取り扱いルールの策定を検討すべきである。また、民間提供データの取り扱いについては、企業が安心して行政にデータを提供できる環境を整備する必要がある。このほか、トラストの基盤を構築するうえで、トラストサービスに関する検討にとどまらず、DFFT(Data Free Flow with Trust)に必要な「トラスト」の要素・考え方を整理することが重要である。
現行法では、データは民法上の「無体物」であり、所有権の概念に基づいて、データに関する権利の有無を定めることはできない。データ流通による利益を享受する「データによる自由」、自身のデータにアクセスできる「データへの自由」、勝手にデータを作成されない「データからの自由」を守ることが重要である(図表参照)。データ流通を円滑に進めるため、誰がどのような権利を持つかを明確にする必要があり、経団連として、データに関する権利のあり方を今後検討する。
■ 行政におけるデータの整備
政府は、人・法人・土地・建物等社会の基本データを「ベース・レジストリ」として整備することとしている。今後の着実な整備に向け、データがリアルタイムに更新される環境を構築すべきである。
また、国・地方公共団体におけるオープンデータのさらなる利活用に向け、利用者のニーズに合った質の高いオープンデータを一覧性のあるかたちで提供されることが重要である。
■ 越境データの保護と流通に関する国際ルール
データローカライゼーション規制については、かねて経団連が主張しているとおり、過度な規制の緩和・撤廃と、新興国等への拡大の抑止が必要である。
政府が民間のデータにアクセスする「ガバメントアクセス」のあり方に関しては、現在、OECDを中心に議論されている。わが国は国際ルールの検討に関する議論をリードすべきである。
■ 個別分野における課題
今般のパンデミックによりデジタル化の遅れがとりわけ顕在化した健康・医療分野と教育分野において、データ活用に向けた環境整備が急務となっている。
健康・医療分野については、ライフコースデータの連携による最適な医療の提供、情報銀行における医療情報の取り扱いに関する議論の進展、公的データベースのさらなる整備を進めるべきである。
教育分野については、学習データ活用のグランドデザインの明確化、教育データのさらなる標準化、セキュリティポリシーに関する統一ルール策定が求められる。
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データ利活用を迅速に進めるうえでは、最初から完璧を求めるのではなく、試行錯誤を繰り返しながら、環境変化に柔軟に対応する必要がある。政府においては、データ利活用に関するメッセージを国民に対して直接発信すべきである。
経済界は、データ利活用を通じた新たな製品やサービスの開発・実装を進め、具体的な利便性・生活者価値を目に見えるかたちで提示し、データ利活用への理解や信頼獲得に貢献する。
【産業技術本部】