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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年11月11日 No.3521 「ビジネスと人権セミナー」を開催 -労働法規委員会国際労働部会

経団連の労働法規委員会国際労働部会(市村彰浩部会長)は10月22日、「ビジネスと人権セミナー」をオンラインで開催した。日本貿易振興機構アジア経済研究所の山田美和新領域研究センター法・制度研究グループ長が「いま、企業に求められるビジネスと人権への取り組み~デュー・ディリジェンスと労働者の権利」をテーマに講演した。また、帝人の小山俊也取締役常務執行役員CSR管掌とアサヒグループホールディングスの谷村圭造取締役兼執行役員兼CHROが、ビジネスと人権に関する自社の取り組みを紹介した。さらに、山田氏をファシリテーターとして、小山氏、谷村氏によるクロストークを行った。

■ いま、企業に求められるビジネスと人権への取り組み(山田氏)

山田氏

山田氏は、今年6月に金融庁と東京証券取引所が改訂コーポレートガバナンス・コードを公表、経済産業省がビジネス・人権政策調整室を発足させるなど、「企業に対する人権尊重を求める機運が急速に高まっている」と現状を分析。人権問題で企業が最も留意すべきことは「労働者の権利」であり、人権に対して自社が直接負の原因となっている場合には、「真っ先に対応する必要がある」と強調した。さらに、自社が他社の負の行為を助長・加担している場合もあることから、外部機関と連携し、救済措置等を行うことが求められているとしつつも、「どこまで対応するかが企業にとって最も悩ましい問題」と指摘した。さらに、デュー・ディリジェンス(DD)に取り組んでいることを「外部に見せることが大事」と参加者に呼びかけた。

■ 帝人の取り組み(小山氏)

小山氏

小山氏は、同社の「すべての人間の尊厳と権利を尊重する」という基本姿勢を明示するため、2019年3月に取締役会決議を経て帝人グループ「人権方針」を制定し、「行動規範」にも人権尊重の文字列を明記するなど、役職員の人権尊重の意識を啓発していると説明した。人権に関するさまざまな課題をステークホルダーごとに洗い出し、グローバルな監視体制を構築したうえで多様な施策を講じていることを明らかにした。さらに、(1)人権尊重の風土醸成に向けて「帝人グループ行動規範実践ハンドブック」の全従業員への配付(2)CEOが行動規範について語るビデオ(15カ国語に翻訳)を各現地法人へ展開(3)苦情処理メカニズムとして全従業員が母国語で常時利用できるホットラインの設置――など、同社における取り組みを紹介した。

■ アサヒグループホールディングスの取り組み(谷村氏)

谷村氏

谷村氏は、(1)19年に「アサヒグループフィロソフィー(AGP)」(2)同年5月に同社の人権尊重の姿勢を明文化した「アサヒグループ人権方針」(3)21年3月に人権尊重の考え方を土台とする「ピープルステートメント」――を策定したと紹介。

さらに、サプライチェーンにおける人権DDについて、「現在はPDCAのP(実態把握)の段階であり、22年度中にPDCAをワンサイクル回し、実施体制のスキームを構築したい」との考えを明らかにした。また、AGPや人権方針に合わせて、「アサヒグループサプライヤー行動規範」を20年1月に改正。全一次サプライヤーにCSRに関する質問表への回答を求めるとともに、サプライヤーのESGへの取り組みのさらなる推進向上を目的に、一社ごとに回答結果をフィードバックしていると説明した。

■ クロストーク

クロストークセッションでは、サプライヤーとの関係づくりで留意している点等について、小山、谷村両氏は、「一人では生きていけないという価値観の共有が大事」(小山氏)、「精神論ではなく役に立つ話をすることや、共感や信頼によって自社を評価してもらうことが重要」(谷村氏)など、経験に基づいた認識を明らかにした。

【労働法制本部】

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