経団連と北海道経済連合会(道経連、真弓明彦会長)は10月20日、新型コロナウイルスをめぐる状況を踏まえ現地開催を見送った北海道経済懇談会に代わり、「道経連・経団連首脳によるオンライン懇談会」を開催した。経団連からは十倉雅和会長をはじめ古賀信行審議員会議長、副会長らが、道経連からは真弓会長をはじめ副会長らが出席した。
冒頭、十倉会長は、「経団連では、昨年11月に取りまとめた『。新成長戦略』において、地方創生を『サステイナブルな資本主義』実現のための重要な柱と位置付けている」と述べ、地方創生に向けた企業ならびに経済界としての取り組みに関して、今般の議論に期待を示した。
続いて、真弓会長が、6月に取りまとめた「2050北海道ビジョン」について説明した。
2050年の「望ましい北海道」を描き、その実現に向けたマイルストーンを30年に設定。「稼ぐ力」の向上やデジタルによる地域づくり等、官民を挙げた「オール北海道」で取り組むべき6つの目標と、それを達成するための47の取り組み事項を提示した。「全国よりも10年早く人口減少が進み、諸課題を抱える北海道において、小さな成功事例を積み重ね、ひとつずつ課題を解決していきたい」と意気込みを述べた。懇談では、ビジョンの実現に向けて、道経連として足元で取り組むべき重点項目を踏まえ、以下の2テーマを設定し、道経連・経団連双方が意見を交わした。
■ 「稼ぐ力」を高める~地域産業の活性化に向けて
まず、産業の活性化に関して、道経連側が、
- 「ポストコロナにおける北海道観光は、リピーターをつくることが重要。ワーケーション等の新たな需要への対応、アドベンチャートラベルの推進等に取り組んでいる」
- 「スマート農業の実装化・普及に向け、機器の共同利用やシェアリングビジネスの実証事業を国に求めている」
- 「食を支える物流機能の強化に向けて、『第二青函多用途トンネル』建設の早期検討開始を国に求めるとともに、理解促進や機運醸成に努めている」
- 「MaaSの推進に向けて、会員企業や自治体等とも連携し、成功事例を積み重ねていきたい」
- 「政府の骨太方針に『ゼロカーボン北海道』が組み込まれたこと等も踏まえ、国の目指すカーボンニュートラルの実現をリードしていきたい」
と発言。これを受け、経団連側からは、
- 「観光需要の回復を座して待つのではなく、ポストコロナを見据えた観光政策の立案と実行が重要」(片野坂真哉副会長)
- 「コロナ禍で食料の安定供給についてあらためて重要性が認識された。スマート農業の推進、物流機能の強化等、農業の成長産業化・輸出産業化に積極的に取り組んでいきたい」(佐藤康博副会長)
- 「MaaSの社会実装の推進に向けて、制度・規制の見直しや、行政が保有するデータのオープン化等の環境整備に取り組んでいる」(菰田正信副会長)
- 「50年カーボンニュートラルの実現に向けて、ベースロード電源として原子力の継続的な活用が必要不可欠」(杉森務副会長)
――などの意見が出された。
■ 未来の北海道を担う企業・人材の育成・確保に向けて
次のテーマについては、道経連側が、
- 「『恵まれた疎(そ)』の北海道に企業を呼び寄せるためには、地域の新しい魅力づくりと強力なPRが必要」
- 「宇宙産業を北海道の未来産業としていくため、個別の取り組みを『オール北海道』の大きな取り組みとすることが重要」
- 「UIJターンや若者の地元定着に向けた支援制度の拡充等を国へ求めるとともに、マイスターハイスクールの運営等にも参画している」
- 「道内企業とスタートアップのマッチング等を通じて、新事業の創出、産業人材の育成に取り組んでいく」
と発言。これを受け、経団連側からは、
- 「地域経済に関わる多様なステークホルダーとの連携について『地域協創アクションプログラム』の策定を進めており、価値協創の好循環を生み出していきたい」(古賀審議員会議長)
- 「地域発のビジネスや雇用の創出が重要であり、地域を越えたビジネスマッチングを拡大していきたい」(隅修三副会長)
- 「宇宙安全保障の確保等の観点から宇宙関係予算の確保を訴えるなど、宇宙産業の振興に向けた取り組みを進めている。また、社会全体でデジタルトランスフォーメーション(DX)人材が活躍できるよう、産学官での推進体制を構築するとともに、副業・兼業を拡大するなど、新たな人材活用のシステムも必要」(東原敏昭副会長)
- 「テレワークや副業・兼業が進むなか、都市と地方、大企業とスタートアップといった垣根を越えて、社会全体で人材を育て合う環境の構築が重要」(中村邦晴副会長)
- 「Society 5.0人材育成に向け、産学官金によるオープンイノベーションがさらに拡大していくことを期待する」(渡邉光一郎副会長)
――などの意見が出された。
最後に、十倉会長は、「『2050北海道ビジョン』は、経団連が目指すべき方向性とも軌を一にするものであり、地域の活力の創出に向けて道経連の皆さまとも手を携えて取り組んでいきたい」と締めくくった。
【総務本部】