経団連は10月7日、労働法規委員会労働法企画部会(中畑英信部会長)をオンラインで開催し、日立製作所の中畑英信代表執行役・執行役専務および三菱ケミカルの中田るみ子取締役・常務執行役員から「ジョブ型マネジメント」をテーマに説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 「日立の経営戦略に連携した人財戦略・人財マネジメントの転換」(中畑氏)
当社は、グローバルな事業環境の変化に応じて日立の事業の方向性を変革しなければならないという強い危機感を持っていた。変革のためには、「ダイバーシティ&インクルージョン」が不可欠となるが、従来のメンバーシップ型のシステムや、日本人のみ別マネジメントをする手法では立ち行かない。そこで2013年から、「主体的で自立した個」を重視するグローバル共通のジョブ型人財マネジメントへの転換にかじを切った。
主な取り組みとして、(1)職務・人財の見える化とマッチング(2)コミュニケーション活性化(3)多様な人財登用――を推進してきた。このうち(1)に関しては、日立グローバルグレード(全マネージャーの等級格付け)やジョブディスクリプション、全社員の人財情報を集約した統合プラットフォームを導入。事業戦略としてあるべき組織・ポストを明確化し、客観的かつ透明性のある人財配置を実行している。さらに、人財部門に求められる役割が変化しているため、グローバルな連携を図りつつ、事業成長の貢献に資する人財部門へと組織再編した。
今後はリスキル教育の強化やマネージャー支援を推進し、自律的なキャリア意識の醸成と行動変容に結び付けていきたい。国・地域・会社を超えた“適所適財”を実現し、多様な人財が能力を最大限に発揮できる人事施策を整備することで、グローバル市場で成長し続けることを目指している。
■ 「三菱ケミカルの人事制度改革」(中田氏)
当社は、17年に3社が統合して発足した。経験や専門性が異なる多様な人材が最大限に能力を発揮するためには変革が必要であると考え、人事制度改革をビジョン実現のための経営施策として位置付けた。そのうえで、(1)主体的なキャリア形成(2)透明性のある処遇・報酬(3)多様性への促進と支援――を人事制度改革の3本柱とし、これらを連動させることで、ありたい姿の実現を図る。
主体的なキャリア形成のための取り組みとしては、21年から公募制を人事異動の大原則とした。また、成長支援の拡充として高頻度で1 on 1などの面談を実施している。
透明性のある処遇・報酬とするため、21年から、一般社員層については、年齢や能力などの「人」要素の強い処遇から役割や責任など「仕事」要素を重視する処遇に転換。管理職層については、より職務価値を重視する処遇に見直した。
多様性への促進と支援に関しては、21年に65歳まで定年年齢を引き上げた。将来的には定年廃止も視野に入れている。
一連の人事制度改革は、人事部の若手社員によるプロジェクトチームが社会情勢や市場を徹底的に調査し、労働組合やあらゆる階層の社員にヒアリングしながら設計した。同チーム自らが経営陣に提案し、約1年かけて内容を決定した。こうした対話のプロセスが、各職場にも良い影響を与えている。
当社は、これからの企業と働き手の関係性は、互いに選び活かし合う信頼関係になると考えている。働き手が主体的に仕事を選び、成長できる機会を企業が提供する仕組みを引き続き整備・推進していく。
【労働法制本部】