本連載では、米国をより深く知るため、広大な米国を構成する50州+1特別区の情報を順次ご紹介します。
19.ミシシッピ州
18世紀にフランスやスペイン、イギリスの入植が進んだ地域である。独立戦争後に米国に編入されてミシシッピ準州となり、1817年、人口の少ない東部(現アラバマ州)を切り離して州に昇格した。
プランテーションが栄えた歴史から、かつては人口の過半を黒人が占めた。その後、人種差別政策や北部の経済発展を理由に、1910年代以降、数十万人規模の黒人が北部諸州へ移住したとされる。それでも足元の黒人人口比率は4割弱と、50州中で最高である。
州内にはタイサンボクが多く見られ、州の木・花の両方に指定されている。また、州の公式ニックネームも「タイサンボクの州(The Magnolia State)」である。
州西部のビックスバーグは、南北戦争の転換点の一つとなった包囲戦の舞台として有名である。ミシシッピ川沿いの南軍最後のとりでが1863年7月に陥落すると、南部は東西に分断されて北軍の優位が固まった。
近年、自動車産業や航空宇宙・防衛産業のほか、ラスベガスに次ぐともいわれる観光・サービス業なども成長している。日本企業の進出も盛んで、同州で最も多くの雇用を創出する外国企業となっている。
20.ノースカロライナ州
1663年、時のイングランド国王チャールズ2世の勅許により設立されたカロライナ植民地を母体とする州。「カロライナ」の名は、清教徒革命前の国王チャールズ1世の名前のラテン語表記「Carolus」にちなむ。同植民地は設立当初から北部と南部とが異なる経済圏として成長し、1729年に正式にノースカロライナとサウスカロライナに分割された。
植民地設立時の地域経済は、主に北のバージニアから流入した移民によるたばこ生産が支えた。今日でもたばこは主要産品の一つであり、日本へのたばこ製品供給量は全米一である。
製造業としては繊維産業や家具製造業が栄えてきたが、人件費が相対的に安い国々との競争が厳しい状況にある。一方で、米国最大規模の先端産業集積地とされる「リサーチ・トライアングル・パーク」を中心にITやバイオテクノロジーが成長してきた。金融業も栄えており、最大都市シャーロットはニューヨーク市に次ぐ金融都市といわれる。
大西洋岸のキティホーク近郊(現在のキルデビルヒルズ)はライト兄弟が初の有人動力飛行に成功した地として有名で、州のナンバープレートにも「First in Flight」という文言が入っている。
選挙戦では毎回接戦州として注目されるが、過去8回の大統領選のうち7回は共和党候補が勝利(例外は2008年のオバマ大統領)。一方、州知事選では、逆に民主党候補が7回勝利している。
21.サウスカロライナ州
1729年に分割されたカロライナ植民地の南部を基礎とする州。当初は英領西インド諸島からの移民が主な入植者であり、米等の大規模なプランテーションが行われた。綿繰り機の発明後、19世紀に入ると綿花生産が中心的産業となり、州経済と奴隷労働力との結び付きは一層強まった。このことは、南北戦争期、他の南部諸州に先駆けて合衆国からの脱退を宣言した歴史からもうかがえる。
かつては繊維工業が栄えたが、今日の製造業は自動車、化学、機械等が中心である。農業では、鶏や牛といった畜産品に加え、トウモロコシ、大豆、綿花等の売り上げが多い。化石燃料の埋蔵に恵まれないこともあり、州の電力需要の過半は原子力で賄っている。
政治面では、連邦議会に上院共和党唯一の黒人議員ティム・スコット氏を送り込んでいる。同議員は4月、バイデン大統領の施政方針演説を受け、野党を代表して反対演説した共和党の次世代スターである。インド系移民の娘であるニッキー・ヘイリー前州知事とともに、新しいサウスカロライナの象徴といえる。
【米国事務所】