経団連は9月13日、教育・大学改革推進委員会企画部会(平松浩樹部会長)をオンラインで開催した。高等教育の質保証をテーマに、リクルート「カレッジマネジメント」編集長を務める小林浩リクルート進学総研所長と、東北大学国際戦略室副室長・総長特別補佐(国際戦略担当)の米澤彰純教授から、それぞれ説明を聴き懇談した。説明の概要は次のとおり。
■ 教学マネジメントと高等教育の質保証(小林氏)
変化が激しく予測困難な時代には、主体的、能動的に学び続けられる人材が求められる。
中央教育審議会(中教審)が2018年11月に公表した「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」では、高等教育を学修者本位の教育に転換するため、高等教育の質を保証することが不可欠だとしている。その際、特に重要な要素として、学修者が学修成果を実感できる教育を行っているのか、客観的に確認できることを挙げている。
ここで重要となるのが、学修者本位の教育の実現のための教育改善に取り組みつつ、社会に対する説明責任を果たす大学運営、すなわち教学マネジメントである。今後、各高等教育機関は、学生が卒業時に身につけるべき資質能力を明確にするとともに、入学から卒業まで一貫した教育のマネジメントを行う必要がある。具体的には、(1)「三つの方針」(注1)を通じた学修目標の具体化(2)授業科目・教育課程の編成・実施(3)学修成果・教育成果の把握・可視化(4)教員の授業内容・方法の改善および大学運営スタッフの能力向上のための組織的な取り組みの高度化(5)大学運営の意思決定・計画立案に必要な情報収集基盤である教学IR体制の確立(6)学修成果・教育成果の積極的な公表――などについて、大学単位、学位プログラム(注2)単位、授業科目単位の3段階それぞれでマネージする必要がある。中教審大学分科会が20年1月に公表した「教学マネジメント指針」では、学長のリーダーシップのもと、学位プログラムごとに、教学マネジメントシステムを確立することが重要と指摘している。
高等教育機関は、今後、情報公表の拡充により、高校生や社会などのステークホルダーの理解を得るとともに、企業との連携のもとで、主体的、能動的に学び続ける人材の育成に取り組むべきである。
■ 高等教育の質保証と国際的通用性(米澤氏)
多くの学生が国を越えて移動するようになり、各国の高等教育が直接比較される時代が到来している。大学院・プロフェッショナル教育において、国際的に活躍できる高度人材の育成が求められるなか、わが国において、その質を保証するシステムが国際的に通用するのかどうか、高等教育のリーダー層は強い危機感を持っている。
日本の高等教育機関は、社会の多様なステークホルダーとのエンゲージメント(共創)を体現する質保証のシステムを構築すべきである。産業界や国際社会と協働してマイクロ・クレデンシャル(注3)の開発・普及・活用に取り組むとともに、国家学位・資格枠組み(注4)の制度化および産業界・地域社会・国際社会が必要とする学位・資格との接続、学修歴証明の国際的なデジタルプラットフォーム化を進めていく必要がある。これらの取り組みを通じて、国際的に通用する高等教育段階の学修の質を保証すべきである。
(注1)「卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)」「教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)」「入学者受け入れの方針(アドミッション・ポリシー)」
(注2)学生に学位を取得させるにあたり、学位のレベルと分野に応じて達成すべき能力が明示され、それを修得させるように体系的に設計された教育プログラム
(注3)従来の学位よりもはるかに小さな学習モジュールによって、学修者が短期間で必要な学修の履歴や成果を認定する制度
(注4)学位・資格の透明性の確保等の観点から、国が、学習量、学修成果、能力等を指標として、学習の達成水準を段階的に分類した枠組み
【SDGs本部】