経団連は9月13日、最近のイラン情勢に関する懇談会をオンラインで開催した。外務省の髙橋克彦前中東アフリカ局長から、8月の茂木敏充外務大臣の中東歴訪をはじめイラン新大統領の就任やアフガニスタン情勢の変化がもたらす中東情勢の転換と展望について、説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 茂木外相による中東歴訪と成果
茂木大臣は、8月15日から24日にかけて、エジプト、パレスチナ、イスラエル、ヨルダン、トルコ、イラク、イラン、カタールの8カ国・地域を歴訪した。それぞれの訪問先での要人会談では、イラン核問題、アフガニスタン情勢、中東和平等について意見交換し、緊密に連携していくことを確認した。また、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)構想についても議論し、中東地域の平和と繁栄に貢献していく日本のコミットメントを強調した。
イランでは、主要先進国の閣僚として初めて、ライシ新大統領と会談した。茂木大臣は、核合意への早期復帰を働きかけるとともに、地域の大国として中東地域の安定に貢献するよう求めた。イラン側は、日本からの新型コロナウイルスワクチン供与に謝意を表明し、諸懸案については、しっかりと対話を通じて解決するとの立場であった。両国が引き続き友好関係を維持し、緊密な意見交換を継続していくと確認したことは大きな成果であった。
■ アフガニスタン情勢の中東諸国への影響
アフガニスタンからの米軍撤退に関する評価はさまざまである。いずれにしても、「米国の退潮」「西側の価値観の敗北」という見方が一定の支持を得ることは否定できない。そのため、中東地域において、反米勢力、反民主主義、テロ組織等が一時的にせよ勢いづくことが懸念される。
中東諸国は、今般のアフガニスタン情勢が自国にいかなる影響を及ぼすか懸念し、どう安定を維持していくか模索している。中東諸国のなかですでに起きつつあった米国依存からの脱却は加速し、各国は安全保障・経済面での自立を目指すであろう。また同時に、中東域内での協力関係が深化し、インフラをはじめとする連結性強化の動きも出てきている。イスラエルとアラブ諸国の国交正常化もその流れの一つといえるだろう。さらには、米国の他の域外パートナーとして、日欧のみならず、中露等との連携が進むと予想される。
■ 今後の中東情勢の展望と日本の外交政策
9.11米国同時多発テロから20年、また、アラブの春から約10年が経過し、中東情勢は振り出しに戻ったという感想を持つ人もいる。今後の10年がどうなるのか、期待もあれば不安もある。アフガニスタン情勢が国際社会の不安感をもたらしているが、このような課題に対処するにあたり、国際社会がイランを含む周辺国を巻き込んで協力し、同じ方向に進んでいければそれは前向きな展開となる。中東の人々は自らの生活の安寧のため懸命に努力している。わが国としては、中東の人々に寄り添い、日本の国益を維持しつつ、引き続き中東地域の安定化に取り組みたい。
【国際協力本部】