経団連は7月15日、ダイバーシティ推進委員会企画部会(工藤禎子部会長)をオンラインで開催し、国立女性教育会館の島直子研究員から、民間企業の正社員として入社した男女を入社5年目まで追跡した「男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査」結果に基づく「初期キャリア期における男女のモチベーションと職場環境~新入社員の追跡調査より」をテーマに講演を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ 女性の管理職志向に影響する5つの要因
近年、特に若年層においては男女の性別役割分業に関する考え方が大きく変化しつつある。その一方で、女性活躍に積極的な企業で男女差なく採用・育成されてきた社員であっても、女性の管理職志向の低さは顕著であり、深刻な問題といえる。女性は男性よりも管理職志向が低く、特に2、3年目にかけて下げ幅が大きい。
入社して数年で女性の管理職志向が低下する要因には、(1)労働時間(2)上司の育成熱意が感じられなくなること(3)仕事の将来性が感じられなくなること(4)リーダーシップに対する自信が十分でなく、その背景としてリーダーシップを期待されていないこと(5)男性の方がリーダーに向いているという意識や組織文化――の5つがあり、能力よりも「職場環境」や「組織文化」等から影響を受けている。
■ リーダーに対する「恩返し」の視点
一方、若手女性へのヒアリングからは、リーダーや管理職となることを前向きにとらえる声もあった。家庭と両立しながら働く尊敬できる上司に出会い、自分もそうなりたいと率直な感想を抱くとともに、熱心に育ててくれたことへの「恩返し」として自分が部下を育てたいと、自らの可能性を見いだしている。大学4年生の時点では、能力や意識に差はない。入社した会社での偶然の出会いが彼女たちの意欲を強く後押ししている。
■ キャリア意識は流動的、働きかけ次第
5年にわたる追跡の過程で、部署や上司が変わったことで、意識が大きく変わった女性を何度も目にしてきた。若手女性のキャリア意識は流動的で、明確な意欲や意識を持ち合わせている人は少ないが、周囲の環境次第、働きかけ次第で、若手女性のモチベーションを変えていける。
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講演後、管理職志向に強く影響する要因、若手女性の育成の仕方などについて、活発な意見交換を行った。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】