経団連は7月15日、観光委員会(菰田正信委員長、新浪剛史委員長、武内紀子委員長)をオンラインで開催し、観光庁の村田茂樹次長と片山敏宏観光戦略課長から「令和3年版観光白書」について、また、やまとごころの村山慶輔代表取締役から観光再生について、それぞれ講演を聴くとともに懇談した。講演の概要は次のとおり。
■ 観光庁
2020年は、訪日外国人旅行者数・消費額が約85%減、国内宿泊旅行の延べ人数が約48%減と、いずれも前年比で減少となった。観光庁では、観光産業の維持に向けた支援策として、20年7~12月にかけて実施したGo To トラベル事業を展開するなど、国内需要の喚起に取り組んできた。
コロナ禍において、観光トレンドが変化しており、マイクロツーリズム、ワーケーション、アウトドア等への関心が高まった。各種調査から、新型コロナ収束後の国内外における旅行意欲は高く、需要の回復が見込まれる。
オフシーズンや密集しない観光地などへのニーズが高まりつつある。受け入れ側としても、これまで以上に地域全体での魅力向上を図ることが欠かせない。観光庁は、廃屋の撤去をはじめとする観光地の面的再生等に積極的に取り組んでいく。
■ やまとごころ
観光再生に向けた一番の課題は、「サステイナブルな戦略がない」ことである。サステイナブルな観光の実現には、経済・社会・環境への永続的かつバランスの取れたアプローチが必要であるが、わが国の観光に関する目標は、社会や環境に対する視点が不足している。
また、現状のままでは、観光振興が地域の暮らしにどれほど寄与しているのかが、国民や地域住民に伝わっていない。観光庁が掲げる「住んでよし、訪れてよし」の実現に向けて、目標と成果指標を設定し、観光の貢献度を可視化して伝えることが重要となる。
その実施には、地域内での経済循環のチェックと、量から質への転換、すなわち高付加価値化を図ることが欠かせない。質を重視する観点からは、政府の30年目標である訪日客6000万人と消費額15兆円のうち、消費額の達成が重要である。
また、高付加価値化には客単価の引き上げだけでなく、リピート頻度を高めることも重要であり、コアなファンをつくることが大切である。コアなファンはコロナ禍でも足を運んでくれることが実証されている。
政府は、価格ではなく、価値で勝負する観光事業者を増やしていくため、(1)DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業への助成金など、新たなチャレンジを後押しする制度(2)異業種からの人材採用に対する支援――などを実施すべきである。
【産業政策本部】