経団連は7月8日、東京・大手町の経団連会館でジャン・アダムズ駐日オーストラリア大使との懇談会を開催し、インド太平洋地域における豪州の外交政策や日豪関係について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ インド太平洋地域における豪州の外交政策
インド太平洋地域は世界経済の成長の中心である。また現在は大国間の戦略的な競争が地域の安定に影響を及ぼしている。競争が必ずしも対立につながるわけではないが、威圧的になることは許されない。
こうしたなか、インド太平洋地域に位置する日米豪印4カ国の枠組みであるQuadが恒久的なものになりつつある。今年3月に首脳会合(オンライン)を行ったことは大変意義深い。Quadの価値観、すなわち平和と繁栄の促進、自由で開かれたルールに基づく国際秩序の推進等は極めて重要である。また、日豪印は今年4月に「サプライチェーン強靱化イニシアティブ」を立ち上げ、開かれた競争力のある多様なサプライチェーン構築にも協力していく。
インド太平洋地域には2030年までに毎年1.7兆ドル必要といわれる膨大なインフラ需要がある。信頼できる質の高いインフラの普及に貢献すべく、日米豪は質の高いインフラを認証する仕組みである「ブルー・ドット・ネットワーク(BDN)」の具体化に向けて協力している。この議論に経団連が積極的に参加していることを歓迎しており、今後も意見を頂戴したい。
■ 日豪関係の強化
パンデミックは気候変動、エネルギー、貿易体制、国際秩序にも影響を与えており、日豪両国はこれらの課題に対処すべく、文字どおり以前にも増して強固な協力関係を築いている。日本の「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想と豪州のインド太平洋戦略は非常に似通っており、相互補完的でもある。
日本がインド太平洋地域においてさまざまな課題に取り組むにあたり、豪州ほど信頼できるパートナーはいない。両国の首脳も非常に仲が良い。二国間だけでなく、Quadや東アジア首脳会議、G20等の多国間の枠組みでもさらなる連携を進めていきたい。
■ 企業への示唆
大国間のデカップリングは現実的ではない一方で、今後は経済活動にますます戦略的な外交政策の視点が取り入れられていくだろう。
インド太平洋地域における日豪両国の取り組みは、同地域に自由経済やルールに基づく秩序を普及させ、連結性を強化することにもつながり、企業にも裨益する。
【国際経済本部】