経団連(十倉雅和会長)は7月8日、大阪市内で「関西会員懇談会」を開催した。十倉会長をはじめ審議員会議長、副会長らが出席し、関西地区からオンラインでの視聴も含め会員約400名が参加。「『。新成長戦略』でサステイナブルな資本主義を目指す」を基本テーマに懇談した。
開会にあたり、6月に就任した十倉会長は、「中西宏明前会長が『。新成長戦略』に込められた思いをしっかりと引き継いで、Society 5.0 for SDGs、サステイナブルな資本主義の具体化に全力で取り組む」との決意を表明。「まずは、目下の最優先課題であるコロナ禍からの復活に向けて、感染拡大防止と経済活動の両立を図るとともに、社会性の視点、すなわちソーシャル・ポイント・オブ・ビューを取り入れながら、環境・エネルギー問題への取り組み、自由で開かれた国際経済秩序の再構築、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進等に注力していく」と述べた。また、ポストコロナのタイミングで開催される大阪・関西万博については、世界各国から高い期待が寄せられていることに触れつつ、成功に向けて努力することを誓った。
■ 関西経済の活性化に向けて
「関西経済の活性化に向けて」をテーマとする懇談では、竹中工務店の佐々木正人社長から、大阪・関西における新たな魅力を備えたまちづくり、また、ロイヤルホテルの䕃山秀一社長から、観光業界の復活に向けた取り組みについて発言があった。
これに対して、
- (1)ウィズ・ポストコロナの観光産業の振興において、国内観光需要の拡大を図るためには、新たな価値の提示が重要であり、ワーケーションはそのひとつの手段として有効である。今後、各地におけるモニターツアーの実施など、ワーケーションの普及促進に向けて一体となって取り組んでいきたい(菰田正信副会長)
- (2)地域の経済社会の活性化には、企業や自治体、個人が帰属意識や愛着心を持って自らのこととして取り組む「オーナーシップ型」の地域づくりが欠かせない。国を挙げた再生可能エネルギーの大量導入の流れを各地域が取り入れ、活力につなげていく点も重要である(隅修三副会長)
- (3)地域経済活性化の起爆剤として、東京オリンピック・パラリンピック、ワールドマスターズゲームズ、大阪・関西万博への期待が大きい。例えば、万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」は、コロナ禍において世界が一丸となって取り組むべき重要課題である。経団連としても、全国的な機運醸成を図っていきたい(古賀信行審議員会議長)
――との発言があった。
■ 産業競争力強化に向けて
「産業競争力強化に向けて」をテーマとする懇談では、エレコムの葉田順治会長から、技術力の強化による国内・海外市場のさらなる展開、小野薬品工業の相良暁社長から、少子高齢化に伴う社会保障制度の構造的な問題の解決に向けた革新的な新薬の創出、新明和工業の五十川龍之社長からは、イノベーションの創出に向けた規制・制度改革についてそれぞれ発言があった。
これに対して、
- (1)スタートアップ振興のための環境整備に継続して取り組むことが重要である。経団連では、「スタートアップ政策タスクフォース」において、具体的な政策支援策等の検討に加え、スタートアップと大企業のマッチングの場である「Keidanren Innovation Crossing (KIX)」を積極的に開催している(片野坂真哉副会長)
- (2)産業競争力強化には、Society 5.0時代を切り開く人材の育成に向けた教育改革が不可欠である。具体的には、遠隔・オンライン授業等を通じた「学びのDXの実現」、対面とリモート授業を組み合わせた「ハイブリッド型教育の常態化」、リカレント教育の拡充等が必要である(渡邉光一郎副会長)
- (3)「2050年のカーボンニュートラル」「30年度に13年度比46%削減」の実現には、官民の総力を挙げたGX(グリーントランスフォーメーション)を推進する必要がある。経済界として、最大限の削減努力を追求するとともに、政府に経済界の主体的な取り組みを促すインセンティブ施策の展開を求めていく(久保田政一副会長・事務総長)
――との発言があった。
また、住友電気工業の松本正義会長は、関西経済連合会が20年に策定した長期ビジョン「関西ビジョン2030」のポイントを紹介したほか、大阪・関西万博の成功に向けたオールジャパン体制での準備の加速について決意表明した。
最後に十倉会長は、関西会員に対し、活力あふれる関西、ひいては豊かな日本の実現に向けて、引き続き緊密に連携することを呼びかけた。
【総務本部】