経団連は7月7日、最近の中東情勢に関する懇談会をオンラインで開催した。外務省中東アフリカ局の高橋克彦局長から、中東和平やアラブとペルシャの間の大きな歴史の流れを踏まえつつ、6月のイラン大統領選挙やイスラエル、パレスチナ等における最新の動向と展望等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ イラン大統領選挙結果と核合意の行方
イラン大統領選挙では、保守強硬派のライースィ司法権長が当選した。しかし、投票率は過去最低の49%にとどまり、無効票は過去最多の370万票に達した。これは国民の現体制に対する無関心や反感を示すものとされるが、イランの体制側は選挙結果をどう受け止め、対応するかを今まさに考えているところだろう。次期大統領の政策をみるうえで、外交、安保、経済の各分野の閣僚人事が注目される。
イラン核合意に関しては、米国の復帰をにらみ、ハメネイ最高指導者の承認のもとで米国以外とは直接、米国とは間接に対話が進められている。予断は許さないものの、早期に合意がなされ、ライースィ次期大統領のもとで国際社会との外交・経済関係の正常化が進展することを期待したい。
■ イスラエル・パレスチナ情勢と課題
4月、パレスチナの若者とユダヤ教徒の衝突が発生した。5月に入りパレスチナ人居住区の取り扱いをめぐり、パレスチナ市民とイスラエル治安部隊が衝突。これがガザ地区とイスラエル軍との間で攻撃の応酬へとつながっていったが、同月21日に米国、エジプトの仲介により無条件の停戦に至った。
双方が勝利宣言をしたものの、最大の勝者はガザ地区を支配するハマスといわれている。国際社会に存在感を示し、ファタハが支配するヨルダン川西岸地区住民の支持、共感も得た。今後、中東和平の進展はもとより、ガザ地区への人道支援のためにもパレスチナ諸派の和解が望まれる。
イスラエルでは、6月にベネット首相を首班とする連立政権が誕生した。宗教的右派から世俗的左派、アラブ系政党まで含む幅広い政党により構成され、今後の政権運営のかじ取りが注目される。
■ 脱炭素時代における日本の中東政策
脱炭素時代においても、中東地域の安定は、引き続き日本経済・外交にとって重要である。中東の石油は、豊富な埋蔵量と安価な供給コストといった特長を有しており、原材料としての石油の観点からも、その重要性は当面不変である。加えて、若年層が多く購買力の高い湾岸諸国等は、市場としての魅力も大きい。
日本が果たすことができる役割は、引き続き経済が中心となるだろう。日本の経済界は、かねて中東諸国から信頼できるパートナーとして高く評価、信頼されてきた。日本政府としても民間と連携し、新たなグリーン技術等での協力をはじめ、中東地域の安定、経済成長に向けて存在感を発揮していきたい。
【国際協力本部】