経団連は6月11日、農業活性化委員会企画部会(澁谷直樹部会長)をオンラインで開催し、日本農業法人協会の山田敏之会長と井村辰二郎副会長から、政策提言や農地集積・集約の好事例について説明を聴くとともに意見交換した。
会合の冒頭、同協会の山田会長は、「農業の担い手の多様化や農地の集積・集約の推進等、農業の成長産業化に向けた課題認識は経団連と共通であり、さらに連携を深めたい」とあいさつした。説明の概要は次のとおり。
■ 2021年度政策提言「日本農業の将来に向けたプロ農業経営者からの提言」
井村氏
今年4月に公表した同提言では、基本的考え方として、(1)近年の農政改革の方向性を堅持し発展させていくこと(2)担い手農業者と農林水産省が意見交換する場を頻繁に設け、政策課題を迅速に解決すること――を掲げている。
重点要請事項としては、大きく6つの柱があるが、最大の課題は、農地バンクをさらに活用し、条件整備を含めた農地の集積・集約化を徹底的に推進することである。集積だけでなく集約まで行うことが重要であり、例えば250坪ほどの小規模農地を1~2ヘクタールにできれば、ドローンなどのデジタル技術をより効果的に活用することが可能になり、生産性の向上やイノベーションの創出が期待できる。
また、政府が5月に策定した「みどりの食料システム戦略」では、サプライチェーン全体にかかわる基盤技術の確立等による生産力向上と持続可能な食料・農林水産業の確立が謳われており、50年までの挑戦的なKPIも示されている。有機農業の拡大等の戦略を通して、その実現に貢献したい。
■ 「『こと京都』の農地集積・集約の実例」
山田氏
こと京都では、九条ネギへの事業の絞り込みや6次化などの戦略により売り上げを拡大するなかで、農地の集積・集約にも精力的に取り組んでおり、京都府内に202の圃場(36.9ヘクタール)を有している。
農地については、先祖代々の土地を手放すことに抵抗感がある人も多い。特に都市に近いとその傾向は強く、農地中間管理機構でも集めにくいのが実情である。
京都市内も同様に集積・集約が難しい状況が続いているが、担い手の多さなど好環境が整う都市部でしっかりと進められれば、農業の発展が期待できる。
京都市でみると、昭和初期から農業が盛んな京都府の巨椋池干拓地は800ヘクタールもあるにもかかわらず、冬場は面積の約10%しか利用されていない。さらなる活用方法を京都市とも相談して検討している。
農地の活用については、現在、農水省や農業界からも声を上げているが、どの農地で集積・集約を進めるかという視点も大切である。
農業者や企業、自治体と共に、効果的な農地活用の方法を検討していきたい。
【産業政策本部】