経団連は5月18日、アメリカ委員会(早川茂委員長、植木義晴委員長、永野毅委員長)をオンラインで開催し、市川恵一外務省北米局長から、「新たな時代の潮流と日米同盟」をテーマに説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 世界の正統な潮流の見極め
中曽根康弘元首相は、日本の安全や繁栄だけでなく、世界的、戦略的視野で日本外交を展開すべく「中曽根外交4原則」を掲げた。そのなかに「世界の正統な潮流に乗る」という原則がある。世界に発展をもたらすと信じられてきたグローバリズムによって、移民の増加、格差拡大、テロや社会不安がもたらされ、これまでの国際秩序が変動期に入っている。世界の潮流が読みにくくなっている今こそ、一時の流行や勢いに惑わされることなく、正統な潮流を見極め、それを支える側に立つことが重要な外交課題である。
経済に目を向けると、新型コロナ危機を受けて、2028年にも米中の逆転が起こるという分析もあり、当面、今後の国際秩序の行方について予見可能性の低い状況が続くだろう。政府だけでなく企業においても、常にリスクに備えて、世界の潮流を見極めて、正統な側に立つという判断を見誤らない心構えが必要である。
■ 日米同盟の重要性
バイデン政権が、菅義偉首相を初の外国首脳としてワシントンに招き対面での首脳会談を実施したのは、日本重視の姿勢の表れであると考えている。こうした日本に対する信頼感は、平和安全法制、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)、FOIP(自由で開かれたインド太平洋)構想の推進などに象徴されるような安倍晋三政権時代からの日本のイニシアティブの積み重ねの結果である。
今回の首脳会談の成果は大きく3つある。1つ目は日米同盟の強化である。普遍的価値および共通の原則へのコミットメントで両国は結束していることが再確認された。FOIPを実現するため連携することも確約している。2つ目は中国への対応についてである。ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動に懸念を表明するとともに、台湾海峡の平和と安定の重要性、中国との率直な対話の重要性を明記した。3つ目は米国の多国間主義への回帰である。日米で、「日米競争力・強靱性パートナーシップ」および「日米気候パートナーシップ」を立ち上げることで合意した。これらを基盤に日米で協力しながら国際社会の課題解決に取り組んでいく。
■ 今後の外交課題
わが国の安全と繁栄のため、プロアクティブな外交を展開すべきである。特に国際場裡でのルールづくりに積極的にかかわっていく必要がある。日本の安全のためには、盤石な日米同盟を発展させつつ、サイバーや宇宙といった新しい分野にも目配りをし、毅然とした責任を持つ必要がある。
また、日米豪印のみならず欧州やASEANも、ルールに基づくFOIPの実現に高い関心を有しており、わが国として一層尽力する所存である。経済安全保障や対中政策も重要な柱である。地政学的・地経学的な視点から、引き続き官民で意見交換や情報共有を強化していきたい。
【国際経済本部】