経団連は5月13日、企業行動・SDGs委員会(二宮雅也委員長、中山讓治委員長、吉田憲一郎委員長)をオンラインで開催した。持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)のピーター・バッカープレジデント兼CEOから、「Vision 2050 : Time to Transform」について講演を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ Vision 2050について
Vision 2050は、2050年までに、世界の90億人超の人々すべてが地球の限界を超えずに豊かに生きることができるよう、企業行動の指針となるインスピレーションの枠組みを示したものである。
われわれは、この野心的かつ現実的なビジョンを共有し、社会が必要とする企業行動に本質的に変革することが求められる。とりわけ、地球システムの持続可能性・強靱性を高めるため、(1)気候変動による緊急事態(2)自然・生物多様性の危機(3)格差の拡大――といった重要課題にチャレンジしなければならない。そのうえで、企業行動の変革のための9つの道筋、具体的には、(1)エネルギー(2)輸送とモビリティー(3)居住環境(4)製品と材料(5)金融商品とサービス(6)コネクティビティ(7)健康とウェルビーイング(8)水と衛生(9)食料――を設定し、ビジョン実現のために必要な7つの重要な変革や、20~30年の10年間に行うべき10の企業行動を示している。
■ グローバルな危機における企業の役割
コロナ禍は、グローバルな社会システムに大きなショックを与えた。サプライチェーンが破壊され、これまでのシステムが脆弱であることがわかった。
危機が蔓延する状況において、企業は社会の変革を主導し続けるべきであり、DX(デジタルトランスフォーメーション)とイノベーションがその原動力となる。あわせて、3つの「思考の変革」に基づいた新たなビジネスモデルの構築、すなわち(1)経団連の「。新成長戦略」でも提示されている、ステークホルダー思考の資本主義への変革(2)強靱性(3)社会・環境の再生力の向上――が必要である。
また、単一の課題に向き合うのではなく、ビジネスに社会・環境の観点を統合して向き合う必要がある。
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意見交換では、「資本主義改革における日本企業への期待は何か」との問いに対し、バッカー氏は、「新しい資本主義は、金銭的部分のみを最適化するのではなく、社会資本全体を包摂して取り組もうとするもの。気候変動、自然保護、格差解消に関して目標を設定し、達成に向けて努力してほしい」とコメントした。そのほか、非財務情報の財務価値への変換、変革の担い手として中小企業を巻き込むこと、テクノロジーの進歩にあわせた労働者のスキルアップなどについて、意見が交わされた。
講演後、6月に公表予定の報告書「SDGsへの取組みの測定・評価に関する現状と課題(仮題)」を審議した。
【SDGs本部】